美術館東側のエントランスはもっとも広範囲に、そして奥深く美術館内部に視線を通すことができるポイントだ。遊歩道からアプローチ通路に下りてまっすぐ進むと、そこが本多通り口エントランス。そこから、ロビーと光庭1を通して円形の展示室14の白い壁面まで視覚を遮るものはなにも無いが、この壁面にいたるまで何重ものガラス壁が存在する。視線は合計何ミリのガラスを透過して、展示室壁面に到達するのだろうか。入り口自動ドア12ミリ+風除室自動ドア12ミリ+光庭前面15+15ミリ+光庭後面15+15ミリ=合計84ミリ。そのときのイメージは写真の通りのクリアな透明感が得られている。通常のフロートガラスでは、かなり強い緑のフィルターがかけられたような色がつくが、ここでは全てに高透過ガラス『クラリティア』を使用しているため透明度が高い。仮にこのガラスを全て一般的なフロート板ガラスに置き換えると、(あくまで計算上だが)入口ドアから展示室14までの可視光透過率は約44%。クラリティアの場合は約66%と、相当の差がつくことになる。
合わせガラスの中間膜の透明性についても検討され、ここでは透明性に優れるPVB膜の使用が望ましいところだが、外壁に使用する合わせガラスであるため耐水性に優れるAB膜(特殊EVA膜)約1.6ミリが採用されることとなった。 |