■住まいの話題[7]:街路樹のメンテナンスから思うこと
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街路樹のある街並
美しい街路樹のある街並みといえば、誰しも住んでみたい風景のひとつとして思い浮かべるでしょう。

関東ではケヤキが好まれるようで、武蔵野の面影色濃い東京郊外や、私の住む横浜の港北ニュータウン隣接の住宅地にもケヤキ並木が多く見られます。私はこの地に住んで20年、事務所も同じ町のケヤキ通り沿いにありますが、最近、このケヤキ並木に異変が起こりつつあります。
維持管理の難しさ
住宅地として開発され人々が住みはじめて20数年経つうちに、ケヤキは堂々たる大木に成長し、それが沿道の住宅に様々なトラブルをもたらしているのです。

たとえば、落ち葉。11月ともなれば日に数回、歩道に降り積もった落ち葉を掃かなければならず、その量は1日でゴミ袋数杯分にもなります。屋根に落ちた葉は、雨樋をふさぎます。また、延び広がった根が宅地内の排水枡に侵入し、排水障害を起こしたり、虫が窓の網戸や洗濯物につくなどの問題も生じています。

様々な苦情を整理し対策を講じるため、町内でアンケートを行ったところ、沿道の宅地に住む人と町内のその他の宅地に住む人とでは、ケヤキ並木に対する感情に歴然とした違いのあることが判明しました。そのためケヤキは、年に数回の過剰な剪定を余儀なくされ、見るも無惨な姿になってしまいました。
武蔵野の沿道のケヤキ並木、
伸びやかな樹形が美しい
数回の剪定を経て翌夏、
葉を繁らせるわが町のケヤキ
環境を守るということ
葉を落としたケヤキ並木が電信柱の列柱のような姿となった時は、哀しくもあり、取り返しのつかないことが始まったという、そら恐ろしい気がしたものです。ケヤキ並木の魅力にひかれ、この町に住むことにした人も少なくないはずです。落葉した箒型の樹形は美しく、雪の降る夜などは幻想的といってもよいほどでした。夏は緑のトンネルのような木陰をベビーカーを押して散歩することも、バス停のベンチでひと休みすることもできたのに・・・。

ケヤキは枯れてしまうのではないかと思ったのですが、春になると芽ぶいて、主幹から細い枝を延ばし始めました。感傷的に眺める以上に、植物は強いというのも事実です。しかし、樹形は戻りません。新芽からは異様に大きな葉が出てきて、新しい枝振りはあまりにもか細いため、しおれたようにうなだれて立つ姿となりました。

それ以来、他の街路樹を注意して眺めると、同様の姿の樹木を見かけます。逆に、伸びやかな枝振りの街路樹に出会うと、その地域住人の心意気を見るようでほっとしたりもします。わが町のケヤキ並木の維持管理については、沿道に住む者だけでなく、町内に住む人達すべての問題として捉え、ケヤキを守ってゆく必要性を強く感じています。
設計者として思うこと
それにしても思うことは、住宅の設計においても、街路樹と同じように、メンテナンスの容易さや費用対効果ばかりを追い求めてしまうことの恐ろしさです。また、環境問題や、建材に由来する健康障害についての情報も増え、施主からの要望として「健全な家」を求められることが多くなりました。しかし、メンテナンス性や施工能率の点(つまりは施工費)に行き当たると、二の足を踏む方もいないわけではありません。

家づくりにおいて、材料本来の姿や機能を生かした提案をしてゆくことは、設計者としての職能が問われる本質論であると言っても過言ではありません。その意味で、伸びやかな樹木のように年月を経て尚、健やかな家を、これからも創ってゆきたいと考えています。
住まいの話題[7]執筆者
■服部 郁子(はっとり いくこ)/アーキキャラバン建築設計事務所

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