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| 住まいは小劇場 |
住まいの構成とか表情はシンプルにしたいと私は考えています。私は、住まいをそこで生活する人の小さな劇場の舞台であり、背景のようなものだとも思っています。
住まいには、住み手自身はもちろん住まう人のさまざまな「もの」が持ち込まれます。居間であれば、テレビ、ソファー、テーブル、掛け時計、カレンダー、置物・・・などなど。
これらのさまざまな「もの」は、そこに住まう人のライフスタイルや価値観などを表現する、まさに大道具、小道具の数々といえます。住み手が変わればその内容も変わりますし、住み手が年を重ねても変わっていくかもしれません。
言い換えると、住まいはそこで生活する人の舞台であり、その背景のようなものだと捉えることができます。日々演じられる住み手の生活とそれを彩るさまざまな「もの」たちに、舞台である「住まい」が過剰な演出を加えないほうがいい、そう思います。 |
| 風景を切り取る |
| ただし、シンプルな住まいを無味乾燥なものにはしたくないのです。住み手の生活の邪魔になることなく、住まいをちょっと印象深くするもの。それは、住まいの中から眺められる風景のようなものではないかと考えています。風景を住まいのなかにうまく切り取って「背景」にする、そんな工夫を加えてみたいのです。 |
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| 写真1 |
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| 写真2 |
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| シンプルハウスの実例 |
| 上の2枚の写真は、先に述べた私の考えを形にした住宅です。写真1は、居間からバルコニー越しに外を見たところ。写真2は、その居間を含む外観の写真です。 |
| 素材と要素を減らす |
居間の壁と天井は同じ素材で仕上げました(写真1)。バルコニーの床は木製のデッキです。室内のフローリングと質感をあわせ、内外の段差もありません。部屋の内外の床が連続しているように感じられます。照明は、自身の形をあまり主張しないダウンライトだけを使いました。
窓は床から天井に達し、左右の壁の端から端までいっぱいに広がっています。ブラインドは、天井のスリットのなかに収めました。この面を構成するのは、この窓以外に何もありません。 |
| 風景を整理する |
窓の外につながるバルコニーの先端には、通常ある立ち上がりがありません。手摺は、ステンレスの細いバーとワイヤーです。外の景色を遮るものをひとつでも少なくしたいと考えた結果です。
床と壁が筒のように伸びていますから、左右にある隣家などが目に入ることなく、正面の木々だけがこの居間から眺められる風景になります。外からこの居間とバルコニーの部分(写真2:2階部分)を見ると、居間から外への視界がどのように整理されているか、理解できると思います。
このような手法を用いて、私は住まいを設計しています。シンプルな住まいは、おそらくさまざまな生活シーンで違和感のない「舞台」の役割を果たすことができると思います。シンプルな住まいでシンプルライフを演じるもよし、おもちゃ箱をひっくり返したようなドタバタ劇もまたよし、それは、住み手であるあなたの演出次第です。 |
住まいの話題[10]執筆者
■森山 竜司(もりやま りゅうじ)/アル・ヨーク・アーキテクツ |