■住まいの話題[11]:住宅には「やんちゃな」視点を
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−−−ご自身にとって住宅の設計はどんな意味を持っているのでしょうか?
上垣内(以下「」)そうですね。僕は元々独立するまでのキャリアとしては、住宅はほとんどやってなかったんです。公共建築や大規模なものの担当がほとんどだった。ですから独立して、やっぱり住宅からスタートすることになって、最初は非常に戸惑ったんですね。
−−−それは何でですか?
上:正直言ってスケール感やコスト感覚なんかもあるんですが、それより発注者が居住者であることについて、かなりびびってましたね。クライアントの真剣度は半端じゃない。それでそういう戸惑いが、まあ独立して時間も結構あったのもあって(笑)、住宅について色々考えるきっかけになったような感じですね。住宅の設計って、一般的にそんなに専門性を要するものではないと思われがちじゃないですか? 誰でも間取りぐらい作れるよ、と。
−−−大学でも最初の設計課題は住宅だったりしますよね。
上:そう。でも何でもそうかもしれないですが、基本が一番難しかったりする。
−−−左ジャブのような?
上:(笑)4LDKをパズルするとかは、何か違うわけです。住み手の人生をパズルするわけにはいかない。それに、当たり前ですが、前に巧くいったから次も同じ方法で巧くいくかっていうと、そんなことはない。そういう厳しさを毎回痛感させられるんですね、住宅って。そうすると、どうしても自分なりの住宅観というか、ベーシックな部分を持っていて、それを「つなぎ」のように使って、クライアントの人生観・家族観を練り上げていくのがいいのかな、と思うようになったんです、当たり前な話ですが。
住まいの中心で家具化した階段
階段の途中で隣室が覗ける
やんちゃな視点
−−−「住宅観」ですか。
上:住宅観といってもそんなに大それたものじゃないんです。まあ健康とか性能的なことは当然押さえておかないといけないものですけど、住宅には「やんちゃ」な部分が必要なんじゃないかと思うんです。
−−−やや情緒的なような(笑)
上:僕らが子供っぽいのかも知れませんが、子供が楽しがる要素を無意識的につくっているところがあって、できたものを後から(自分たちで)検証し直したら、どうもそうらしいぞと。デザイン的に子供っぽいとか、余計な装置をごてごてつけるんじゃなくて、当然、機能的に必要な部品の構成を組み替えているだけだったりするんですけど。
−−−具体的に教えていただけますか?
上:そうですね。例えば階段って、唯一垂直方向に視点が移動できる部分ですよね。そういう楽しさを活用せずに廊下の隅に押し込める手はないな、と思うんです。だからここ(コートデッキの家)なんかでもメインの空間の中心にどんと据えてみたり。別の住宅では、階段の途中の壁にのぞき穴をあけてみたり。これなんか1歳児でも楽しんでます(笑)。もちろん大人の方は子供みたいにはしゃいだりしませんが、その場で、「ああ、子供だったら楽しいだろうな」って想像してクスって笑う。そういう「クスっ」という要素が日常生活にもっとあってもいいかなと思うんです。
−−−長く付き合う住宅だからこそ、ささやかな楽しみが多い方がいいってことですね?
上:そうですね。そういうゆとりが、照れくさいですけど豊かな暮らしにつながるんじゃないかと。別に、「笑える空間」というわけではないんですけど。
−−−それはそうですよね。ありがとうございました。
※これは2002年10月某日の独り言を記録したものです
住まいの話題[11]執筆者
■上垣内 伸一(うえがいと しんいち)/ウエガイト建築設計事務所.

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