■住まいの話題[13]:狭小住宅の収納はモノと空間のバランスが大切
画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。
モノの量が減らない現実

狭小住宅というのは、都市部の狭い敷地(20坪前後ぐらい)に建つ小住宅のことです。

狭小住宅の設計で、私がもっとも苦労するのは、その住宅に完成後まもなく入ってくるモノの収納をいかに考えるかということです。科学技術が進み情報化社会が到来して、あらゆるモノがコンパクトになってきた世の中とはいっても、住宅におけるモノの量(=収納容量)というのは減ることがないようです。

狭小住宅においては、生活に見合った十分な収納スペースを最初からあてがうというのはなかなか望み得ないものです。将来、部屋のなかにモノが溢れ出すことを覚悟して設計するほうが現実的です。しかしそれでも精神的には、いつも落ち着きの得られる快適な生活空間を実現したいというのが、建築家としての性みたいなもので、そのことを常々考えています。

モノをどう位置づけるか

それではどのようにしたら、住宅のなかで増大していくモノと、上手にわたりあえるでしょうか。

一つには、収納を含めた建物そのものを極力シンプルかつミニマルにつくり、空間そのものの存在と、その中に置かれるモノとの違いを明確に対比させるということがあります。雑多なモノの集積にもびくともしないほど、存在感(又は重厚感)のある骨太な建築を最初につくってしまえば、モノの氾濫に対しても、あくまで感覚的ではありますが、空間としての快適なバランスが保たれるはずです。

写真1:ボディルーム
写真2:下足収納
もう一つは、モノが部屋内に露出することをあえて許容して、逆にインテリアと一体になるよう空間をデザインすることです。それには、モノが単一に整理整頓されて在るべきところにあればいいというだけではなく、モノ自体が自然にディスプレイされ違和感をもたらさない雰囲気になっている必要があります。そのため、建築にはなんらかの仕掛けが必要です。つまり空間が主役か、モノが主役かということです。私が設計した建築のなかから、それぞれの具体例を示してみます。
<白で統一されたボディルーム>
白という色の統一と、透明なガラスを多層的に用いることで、均一でミニマルなボディルームをつくっています。中にしまい込む収納をあえてつくらないで、タオルや石鹸や髭剃りといった小物が周りに溢れ出したとしても(現実にそうなっているみたいですが)、全体として見苦しい場所にならないように考えています。写真1でみると、少し無機質でクールな空間ですが、このような場合は、むしろこれぐらいの強い基調色を用いることで、モノとの調和が生まれています。これはモノが脇役の空間です。
<靴(モノ)をシルエット化した下足収納>

夫婦で60足という大量の靴を収納するにあたり、通常のボックス型の下足入れでは、下足入れそのものの置き場所を考えなくてはならないという悪循環になります。ところが、靴を完全に隠蔽することをやめてみれば、写真2のように、開口部のふところ部分のスペースを下足棚に利用して、省スペースでかつ明るい玄関ホールとすることができます。この場合は、さらに表面の扉をポリカーボネート板にすることで、靴のシルエットのみが均一な表情を作るように工夫してあります。玄関ホールの打ち放しコンクリートのテイストと相まって全体でモノトーンな調和を生み出しています。これはモノが主役の空間です。

このように、狭小住宅でもモノをどのように捉えるかによって、見た目にも違和感のない使いやすい収納が得られるだけでなく、モノとマッチした豊かな空間が可能になるのです。

住まいの話題[13]執筆者
■古川 尚弘(ふるかわ なおひろ)/古川尚弘アーキテクツスタジオ 一級建築設計事務所

旭硝子株式会社
お役立ちリンク  資料請求  お問い合わせ  サイトマップ  ご利用環境  サイトポリシー  品質への取り組み
(C) copyright 2001-2005 旭硝子株式会社 All right reserved.