■住まいの話題[14]:豊かな感性をもって住まう:バックパッカーの体験から
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私はリュックを背負い、バックパッカーとして旅をしてきました。気に入った所に行き、宿を探し、納得するまで滞在する。いつまで旅の楽しみを続けられるかは、もちろんお金次第! なので、常に安くすることにこだわる。そんなスタイルが私の旅です。

一番の思い出は、建築家として独立する際(1990年)、4ヶ月半ほどヨーロッパの建築巡りをしながら放浪した事です。スタッフ時代と違い、自分自身の充実した密度の高い時間を持てたことは、なによりもプラスになりました。

これまで30ヶ国100都市以上の街や建築・集落などを見てきました。風習や宗教に戸惑ったこと、親切な人と出会い助けられたこと、新たな価値観を学んだこと、悪い人と出会いトラブルを体験したこと、病気で寝込んだことなど、さまざまな思い出があります。「一期一会の出会い」と「感動」こそ、私のクリエーターとしての感性を磨き、創作の肥やしになる貴重な体験であると位置づけています。

アンデスの都市に学ぶ
先住民族のインディオ文化にひかれて、南米を旅行した時は格別でした。1ヶ月半かけて廻ったボリビア、ペルー、チリは驚きと感動の毎日でした。日本を出国しておよそ30時間の旅。最初に訪れた国ボリビアは、アンデス山脈の中央に位置し、「高原の国」とも呼ばれています。空港で全く英語が通じないという洗礼を受けました。ここではスペイン語しか通用しないのです。
ラパスの全景
郊外の素朴な住居

首都ラパスの標高は富士山より高い3800m。最も天空に近い都市です。酸素が希薄なため、酸素マスクを片手に旅を断念する人も少なくない危険なところです。酸欠状態になると機敏な動きが出来なくなります。ゆっくり歩くのがコツです。走るなんて絶対不可能。宿泊した部屋はエレベーターのない安宿の5階なので、階段を上るのに息が切れ、山登りのような重労働でした。旅行者はアルコールを飲むのも控えた方が良いようです。

しかし、魅力もいっぱいあります。大好きなフォルクローレ(民族音楽)が毎日楽しめます。ケーナやサンポーニャの音色は不思議と心を和ませてくれます。フォルクローレが響いて心地よい空間、それは是非創ってみたい世界の一つです。

インディオは私たちと同じモンゴロイド。何か魂の部分でつながりを感じます。日本人と似た顔つきの人が多いのも驚きです。人なつっこい人たちは、私をすぐに仲間として受け入れてくれたので、スペイン語は日々上達しました。

ラパスの夜景は、表現が出来ないほどの美しさです! 盆地上になった斜面に寄り添うように建つインディオの家々は、素朴な明かりが灯ると、まるで空を舞う螢の群のように浮かび上がります。どこか懐かしいような素朴な暖かみを感じさせてくれ、言葉に尽くせない素晴らしさでした。そんな美しい夜景をもたらす住まいを、私も設計したいと思っています。

大地とともに輝いて生きる

インディオは、紀元前より高度な文化・建築様式を築き上げ生活していました。その末裔は現在、スペイン文化やキリスト教文化を受け入れながら、独自の文化を形成し、悠久なるアンデスに身を任せて生きています。

どんなに粗末な家や集落でも、とりまく大地は彼らと一体でした。素朴な住居やバラックのような建築物も絵になっています。彼らは生きていることに豊かな感性で反応し、毎日を楽しく暮らしています。その笑顔がなんとも心地よい雰囲気と空気をかもし出します。

アンデスの旅から学んだことは、「純粋に生きる」「輝いて生きる」という住み手の意識や姿勢がなによりも大切であり、そんな住み手の器・空間を創るのが、建築家の役割だと実感しました。

住まいの話題[14]執筆者
■米村 和夫(よねむら かずお)/(有)米村アーキテクツ スタジオ

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