■住まいの話題[16]:大黒柱が意味すること
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大黒柱に育てられ...

誰が撮った写真であろうか? 幼い頃の私が、家の大黒柱にひもで結ばれている写真がある。記憶では、この大黒柱は家の中央に位置し、大きくて、頼もしく感じていたのを覚えている。きっと、家のまん中にある柱だから、家族の誰もが見える位置だったのであろう。

母の忙しい時に、歩き始めたやんちゃな子供をくくりつけておくには、恰好の場所だったに違いない。こんなことが、他の家庭でも行われていたかどうかは、わからないが。ともかく、少し大きくなっても私はこの大黒柱をよく利用した。柱をぐるぐる廻ったり、のぼったり、隠れたり、抱きついたり、身長を記したり。

見上げると、この柱に接続している梁、そしてその上に棟。そんな家の構造はむきだしだったから、子供であっても「家にとって最も大事なのは大黒柱なんだなあ」と。そのことは、自然にわかっていたように思う。そして、大黒柱を見ると不思議な安堵感が得られたのだ。

現代の家で育つ子供達は...
そういえば、現代では柱の露出している家は、めっきり少なくなってきた。おそらく、核家族化と土地の高騰などで、家の面積が小さくなり、空間をより無駄なく確保できる構法が主流になってきたために、消えつつあるのだろう。こうした住宅事情とともに、家族の生活を支える人を「家の大黒柱」というが、その言葉も聞かれなくなったように感じる。
大黒柱を用いた3世代家族の家
長いバルコニーの床を支えるコンクリートの列柱

我が家の大黒柱は誰? 子供達がそう思うのは、今やナンセンスな問いなのだろうか。いや、私は今こそ、子供達に大黒柱が必要なのだと言いたいのだ。

社会問題になっている子供達の心の病、不登校、家庭内暴力、いじめなど。彼らの精神の崩壊は、大人との信頼関係の欠如やよりどころのなさから始まっているのではないだろうか。心の病を抱えている人達の大半は、家族(とくに父親)とのコミュニケーションになんらかの障害を持っている。

家族(大人)が子供達を守っているという役割をはっきりさせることが、なによりも子供達の精神に安らぎを与える。信頼関係を明確にしなければ、子供達の精神はつかみどころがなく、宙に浮いてしまう。彼らは不安なのだ。人間の成長に最も大事なことは「安心感」だと思う。

大黒柱は家族を守る...

ならば、住む人と家の関係もそうだろう。「大きな柱が、この家を守っている、支えている」という、安心感を抱かせる力強さを目にすることは、住む者の心をとても癒してくれる。

子供の頃、大黒柱に抱きつきながら感じていた、あの頼もしさや力強さは、少なからず私の成長に影響を与えているだろう。また母も、大黒柱を頼りにしていたからこそ、私をくくりつけたのである。

このように、家族にとって大黒柱の意味するところは大きい。以来、私の設計した住宅では、柱が重要な役割を果たしている。家族とのコミュニケーションをうながす要素の一つとして、大黒柱の意義をこれからも施主とともに考え続けたいと思っている。

住まいの話題[16]執筆者
■相原 孝(あいはら たかし)/(有)エーツープラスワン一級建築士事務所

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