■住まいの話題[19]:自分らしい家:イタリアからのヒント
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私は1991年から5年間ミラノに留学しました。イタリアのデザインは、家具、車、ファッションと、日本人には真似のできない不思議な魅力や輝きがあります。まさに、楽しさや喜び、そして遊びの心に満ちた独創的な自由な造型!それは、長い歴史の中で育まれてきた膨大なストックと魅力ある多様な文化をベースにもつ、この国ならではのもの。
多様な住宅タイプ

イタリアでは、人々の生き方も住まいのあり方もさまざまです。一方、日本では人々の生き方が多様とは言い難く、「ライフスタイルの多様性」と言われる割には、住宅タイプの選択肢はそれほど多くありません。大多数の人々はディベロッパーの供給する都心のマンションや郊外の戸建て住宅に落ち着いています。

本来、住宅は人生の中で一番高価な買い物であり、自由な人生設計の場であるはずです。そこでどのように住むかは、その人の人生哲学や美意識が表現されることです。

この国にはいろいろな住宅の形式があります。夏の夜は友人知人を招き、バルコニーでフェスタ(宴会)を楽しむのがミラノやローマなど、都市の住み方。夕暮れに包まれたバルコニーで、街の家並みが薄明かりの中にほんのりと見渡せる中、おいしいワインと手作りの料理を食しながら、会話を楽しむのは最高に幸せな気分!

石づくりの町が多く、車の騒音がそのまま壁に伝わり、食事中の私たちの耳元にも伝わってきます。日本人の感覚からすれば落ち着かないと言うことになりますが、彼らは全く気にしません。むしろ、部屋の中にいるのに戸外の広場で食事をしているかのような雰囲気があり、都市に住むことの楽しさに満ちています。

運河沿いに並ぶヴァカンス用の家々
画家の展覧会場にて
変化に富む住み方

最近は都心の古い地区に住むことがブームになっています。ミラノのナビリナ地区はその一つです。昔の貴族の邸宅(パラッツォ)をいくつもの家族が分割し、一種の分譲マンションのようにして住んでいる人が多く、知人の画家は住まいと仕事場とギャラリーに分け、展覧会を開催しました。

でも時として、人口密度が高く自然の少ない都市生活が気づまりになることがあります。そこで別荘という発想が生まれ発達してきました。都市生活と田園や海辺での生活をうまく使い分けるという考え方は、現代では大衆化し、多くの人々が夏にヴァカンスをとり海や山へくり出します。

食でつながる家族

ヴェネト地方に住む友人のロベルタの住宅は広大な庭付き。食いしん坊なので、食事をする場所が4カ所もあります。まずは台所:普段の食事は広めの食卓で済ませます。次が本格的なダイニングルーム。そして屋外のテラス:気候がいい時期に気分良く食事をします。さらに地下や半地下に設けられたタヴェルナと呼ばれる大きな部屋:子供の誕生日やクリスマスといった年に数度の特別な日に、何十人もの友人を招いて大パーティーを開きます。

イタリアでは毎週のように家族や親族で一緒に食事をし、賑やかに過ごす習慣があります。学友の多くは、週末になるとマンマ(おふくろ)の味恋しさに帰省していました。「家族とは、日曜・祭日に一緒に食事をする人たち」を指すと言われているほどです。

イタリアでの生活を通し、自分らしい住まいを自由な発想で演出する彼らから多くのヒントを得て、私は住み手が生活に楽しさを見いだせる空間づくりを、設計のポリシーとしています。

住まいの話題[19]執筆者
■米村 ふみ子(よねむら ふみこ)/(有)米村アーキテクツ スタジオ

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