■住まいの話題[22]:良い「くらしの器」はどのようにして造られるか
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「くらしの器」造りは切り張りの情報と知恵ではうまくいかない

人は住まいを新たに計画したとき、その多くは住宅展示場の行脚を始めます。また、住宅関連の雑誌を読みあさります。その結果、あらゆる情報と知識が豊富に集まるものの、「自分たちのくらしの器」を造る事からかけ離れていくのに気づかないのが現状です。

また、建て主自身が暮らしの場である「器」を建てる際、夢の実現に向けて自らの暮らしぶりを冷静に見据えなかったために、家の完成が思わぬ結果となり、後悔しているのが実情です。

「くらしの器」で自然体に暮らす

おいしい料理も器の選択で食欲が出たり、なくなったりします。食だけでなく、私たちの日常はいつも五感に頼っています。

暮らしの場である「器」のスタイルは人によって異なりますが、五感は満足させたいものです。五感を満足させる事が日々の暮らしを安定させます。この満足感が時を経て良い「くらしの器」となり、次世代へ引き継がれていくのです。「くらしの器」造りは、世の中のにぎにぎしいはやり言葉に左右されず、自然体でありたいものです。

上棟に向けての伝統軸組
丸窓から光りを取り込んで招く
「家の建て上手」が求められる

設計者は、建て主と造り手の中間に位置し、中立の立場で建て主の予算を考慮し、あらゆる要望に耳を傾け、実現に向けて努力するプロフェッショナルです。設計者の個性を知るために、設計した住宅のいくつかを訪れてみるのもよいでしょう。高い工事費を出すのですから、労をいとわず協力してくれる設計者を探してみることです。

それは「家の建て上手」が、良い「くらしの器」を手に入れる事に繋がると考えられるからです。「家の建て上手」とは、建て主・設計士・造り手がお互いの世界を知る事です。

顔から顔へ、手から手へ

納得のいく「くらしの器」を造るためには、建て主・設計士・造り手という三者の役割がはっきりと見えなくてはならないと考えます。それにはまず、相手の顔が見えることです。顔が見えると、互いの意思疎通ができるものです。

特に、造り手にとっては建て主の顔を知ることで存分に力が発揮できます。一方、建て主は造り手の顔を知ることで安心感が湧いてきます。それと、将来に渡って、設計者とともに完成した家を見続けてもらうためにも良い事です。

造り手である職人たちは、職種の違うもの同士が技術を競い合いながら、心意気で建物の完成を目指していきます。しかも、建て主は彼らの技術を工事費の名目で支払っています。そこには、金銭授受のみの関係だけでなく、手と手を差し伸べることで、感謝の意を尽くす事も必要になります。建て主の熱意さえあれば、職人は強い助っ人となるものです。

このように、家造り関係者が互いに相手を思いやる自覚があってこそ、始めて、良い「くらしの器」が造られていくのだと考えています。

住まいの話題[22]執筆者
■豊崎 洋子(とよさき ようこ)/桂設計工房

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