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茶室を設計してほしいのですが…。かつての私は自信がなくてもそれを感じさせないようにふるまい、参考書を片手になんとか設計していました。しかし、資料を調べいろいろな茶室を知ると、茶室によってそれぞれ寸法や構成が違い、何がどうなのか判断出来ずにおりました。また、客はどこへ座りどのようにして茶を飲み、亭主はどのようにふるまって客と対応するのかがわからず、設計をしても自分自身が今ひとつ納得出来ずにおりました。
そこで、建て主に自信を持って良い茶室を提供したいという事から、茶の湯を習い始めたのが約10年前。とりあえず、茶の飲み方・亭主のやり取りを経験すればいいかなと思い、1〜2年を限度に考えていました。ところが、茶の湯は奥が深く、いまだに続けています。
茶の湯に関してはいろいろな方々が書かれた本があります。ここでは、私自身の茶の湯の体験から、住宅設計において、茶の湯の精神をどのようにとり入れているかを述べたいと思います。 |
| 四季の変化・趣をとり入れる |
茶の湯をしていると、四季の変化に敏感になります。茶の湯は季節感を大事にするため、茶道具だけでなく、床の間の掛軸や生花もその季節に合ったものを使います。そのため、四季折々の植物に接する事が多くなり、おのずと四季の変化の喜びを感じとるようになりました。
住宅設計では、四季折々の趣が楽しめるように中庭を作り、季節感のでるシンボルツリーを植えたいと思っています。狭小住宅で中庭がとれない場合は、玄関先に植込み部分を作り、必ず植栽するようにしています。 |
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| 中庭のある住宅 |
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樹は春になるとうぶ毛の芽をふくらませ、緑色に変化して若葉になります。新緑の美しい季節を迎え、葉は夏の間生い茂り、秋には赤や黄色の紅葉に変化し、やがて枯葉の季節で冬の訪れを知る。この一連の流れや変化が、私達の日常生活を楽しく、心豊かにしてくれるのです。
樹木は四季の趣だけでなく、自然の喜びをも感じさせてくれます。特にうっとうしい雨日を楽しくさせてくれます。雨の降る夜などは中庭をライトアップするのです。そうすると、スポットライトで照らされた葉を濡らす雨は電球の光でキラキラと輝き、まるで宝石のようです。あちらこちらで光り輝くダイアモンドの雨が、樹いっぱいに付いて美しい光景をかもし出してくれます。何時間見ていても動きや変化があるので、見飽きる事はありません。この喜びを一人でも多くの建て主に知ってもらおうと、設計にとり入れています。 |
| 茶室の精神をとり入れる |
京都の光悦寺にある茶室で行われた表千家による相伝式のときの事です。茶室は調光器で薄暗くされ、そのほのかな明るさの中で茶事が行われました。当日は晴れたり曇ったりの天気で、時々陽が差していました。太陽が顔を出した瞬間、茶室の南側に面する障子がパッと輝き、樹木の影を映し出し、柔らかい光で部屋が明るくなりました。しばらくしてまた、薄暗い茶室に戻ってしまいましたが・・・。この繰り返しで生じる明暗の変化に感動してしまいました。
相伝式を終えた後、宗匠が今まで閉じられていた障子を開け放すと、急に室内が明るくなり、同時に、鷹が峰の景色が目にとびこんできました。この演出の素晴らしさは、見事というほかはありません。再度の感動でした。
自然の変化を生かした光と影、明と暗、それらを演出するための装置や空間構成をいかに建築空間に具象していくか、それが私のこれからの課題です。 |
住まいの話題[28]執筆者
■原 宏(はら ひろし)/一級建築士事務所 FAS工房 |