■住まいの話題[39]:住まいの肖像
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居心地のよい生活

私たちを取り巻く環境は、日々変わり続ける時代のなかにあって、そのスピードも振幅も激しさを増しながら奔走しているように見えます。いい時代とは言えない大変な状況にありながらも、私たちは生活のなかに楽しさや居心地のよさを見出すことができる、すてきな文化を持っています。

常に新しいものを追い続ける流行のレストランや、未体験のアミューズメント施設からは、時代の変化を敏感に感じ取り、さまざまな旅からは異世界の時間を体験し、ときには何千年もの不変の時間さえも楽しむことができます。そして「住まい」は、人それぞれのなかにある価値観によって、時代や流行とは異なる居心地のよい時間を過ごすためにあります。

一日のはじまる場所であり、一日の幕を下ろす場所である家。あなたはどんな「住まい」がほしいですか?

普段着の家

誰にでも服や鞄、器などで長くながく使っているものがあると思います。日々の生活になじんでいて、デザインされすぎず、かといってありきたりではないもの。丈夫で、無駄のないもの。直しても使いつづけているもの。それはどんな色ですか?どんな素材ですか?

家でのんびりするとき、あなたはどんな服を着ますか? こころが丸くなるときはどんなときですか?

・・・あなたの居心地のよさの背景になるものが「住まい」なのです・・・

丈夫で、無駄がなく、かといってありきたりではない家。主張し過ぎず、生活の背景になってくれる家。長く使っている、お気に入りのものたちとしっくりなじむ家。家づくりは、普段着でいられる場所を考えることからはじまります。

トレドにて
サクラ草
非日常の扉

旅先で拾った石、茶器、ヴァイオリン、野草、月のかけら・・・いつもと違った時間が流れる場所。家のなかにこうした非日常への扉をつくってみませんか? あなたのつくる扉からは何が見えますか? 山を歩いているときに見つけた落ち葉の色。夕陽が海に沈むときの止まった時間。毎日の生活を前向きに送ることができるよう、ちょっとした幸せを感じられるスペースを考えてみませんか?

気分や季節に合わせてディスプレイを楽しむことで、同じように過ぎていく毎日も違って見えてくることでしょう。とても小さな空間ですが、こういった場所は陽だまりのある居間や、爽やかな風が抜けるテラスなどと同じ位、生活のなかに居心地のよさをつくり出します。

建築家の役割

建築家にはデザイン力はもとより、技術のノウハウ、コスト監理、スケジュール監理などの総合的なバランス感覚が必要とされます。新しい技術や材料は、描いている生活にどのように貢献するのか、あらかじめイメージと照らし合わせることで、適切な配分が可能となります。したがって家づくりは、建主と建築家がその家に合った居心地のよさを共に考え、答えを見つけて出していく作業でもあります。

居心地のよさは数字で測ることが難しいものです。構造強度や通気・換気、シックハウス対策など、技術の進歩によってどんなものでも分析・解析ができるようになりつつあります。

これら技術の成果を台紙に「住まい」のデッサンは始められるのです。

住まいの話題[39]執筆者
■豊田 健太郎(とよだ けんたろう)/(有)豊田建築設計室

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