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有史以来、人間の営みの中で最も大切なものは、充分な食料を確保し自然の脅威から身を守り、明日への活力が湧き得られる安全で快適な場所を持つ事でした。時代が進むにつれて人々の生活レベルが向上し、分業化と専門化が促進されると、建物も住まうという機能から住まいと作業の場が一体となり、更に作業や使用目的別の建物形態が生じ、機能性や効率性が追及されて今日に至っております。この様な建築形態の変化は家を生活の場として捉え、大切な資産としての耐久性の追求や住み心地など細部に至るまでのデザイン的配慮が求められてきました。 |
| 住まいを造るに当って |
複雑化した今日の社会の中で、唯一安定したぬくもりの場としての家を造る上で大切なのは、住まい手の家に対する夢や希望と共に自らの住まい方に関する考え方を持ち、今後の長い年月の間に生じる家族の成長や家族構成の変化、建物・設備などの経年変化にも配慮して利便性に富む使い易い家造りを考え、住み手の好みや姿勢を汲み取る結果が形として現れ、クライアントの喜びとなって快適に末永く住まい続ける事が出来るのだと考えています。以下、事例によってご説明致します。 |
| 事例(1)A邸:住まい方の異なる二世帯住宅 |
両親と若い家族の生活様式や生活行動は異なり、独立した二つの家族があります。若夫婦は多くの友人たちとバーベキューパーティーなどを愉しむ事が出来るバルコニーや広い居間、高い天井など住まいに対する強い夢や希望がある一方、両親は和風を好み、音楽や読書を愉しみ、鍋料理をつつきながら晩酌をしたいとの事でした。この相反する住まい方を上下に分け独立した生活空間とし、共用の玄関と階段を自由に行き来する事で密度の高い家族関係を作り出しています。 |
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| 事例(3):古民家の再生 |
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| 事例(4):ヨーロッパ的住まい方をとり入れた家 |
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| 事例(2)T邸:健康住宅を意識して |
アトピー性皮膚疾患を持つ子供のいるTさんはハウスダストの発生を押え、建材による健康への悪影響を避ける事を強く希望し、その上で若い夫婦に相応しく音響効果に配慮した変化のある室内空間を望んでいました。居間レベルより一段高い食堂と厨房、その前面には広いウッドデッキテラスを設け、壁の下地から仕上げまで全て自然材を使用し、自然光を室内に採り入れて通風を良くする事により、健康的な家造りが出来たと喜ばれています。 |
| 事例(3)古民家の再生 |
江戸時代に近郊農家の建物を移築し、以来庫裏として使われてきたこの建物の室内は暗く冬は極端に冷える状態でした。建物をジャッキで持ち上げ、新たにコンクリートの基礎を施工し、断熱材を敷き詰めると共に天窓を設ける事によって広くて暗かった土間が丸太梁を現した明るく暖かい居間・食堂・厨房となりました。充分な設備を施すことによって今日的な住まいの場となり、受け継がれてきた文化的遺産を利用し保存出来ると共に、限られた予算内で従来と同じスペースを確保する事が出来ました。 |
| 事例(4)H邸:ヨーロッパ的住い方をとり入れた家 |
ティールームを中心としたこの家は、H氏ご一家のヨーロッパ文化を愛する気持ちと雰囲気が欲しいという望みを理解して計画されました。2階部分にはトップライトを通して自然光が室内に入るファミリールームを中心に各自の寝室を配して、家族のくつろぎの場となっています。加齢による身体能力の低下を考慮して段差の無い平面計画をし、上下階の移動のためにエレベーターを設置してあります。ティールームによる外観構成が、H氏の住まい方への思いを表していると思います。 |
| 住まいの喜びと共に |
以上のように家には住まい手としての固有の住まい方に対する夢や希望がありそれを理解し、潜在的に持っている住まいに関する思いを汲み上げる事が大切です。建築法規や敷地条件、建設予算などの制約の中で安全性や耐久性を保ち、個々の住まい方に対する思いを可能な限り具現化する事が建築家の責務と思い、住まい手に喜ばれる家造りを目指しております。 |
住まいの話題[40]執筆者
■伊東 正好(いとう ただよし)/(株)伊東建築設計事務所 |