■住まいの話題[42]:ノーベル賞と建築設計
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先日テレビ番組で、日本のノーベル賞受賞者の江崎、小柴、野依の3先生が対談を行っていました。その中で、江崎博士は新しい発明や発見には、五つの心構えが必要である旨の話しをしていました。その中の第一は、「何ごとにも縛られない自由な発想を持つことがまず大切である」とのことでした。この話には、他の方々も同様な意見を述べていました。また、カミオカンデの小柴博士は、「常にそのテーマについて深く考え続けること」が重要であると言っていました。

「形の無い物」から「形のある物」へ

この心構えは、建築家がコンペや実際の設計を考える時の最初のアプローチと全く同じであり、「形の無い物」から「形のある物」を生み出す人種にとって非常に重要なことです。

有名な建築家コルビュジェはドミノシステムを発表し、近代建築に大きな痕跡を残しました。ドミノシステムの意義は、それまでの建築的な制約を取り払い、ピロティ、屋上庭園、自由な平面プラン、ファサード形式の自由、横長の窓の5原則を1926年の時代に提案したからです。

相対性理論

小柴博士は、アインシュタインの相対性理論がアインシュタインでなければ発見されなかったか、と言う問いに対して、遅からず同時代の誰かが発見していたであろうと言っていました。最先端の科学の世界でも、同じような優秀な研究者が世界中で研究していてしのぎを削っているようです。その意味では、「相対性理論」も時代が発見したと言えるのかもしれません。

ノーベル賞のメダル
コルビュジェの5原則
偶然

また、この対談に参加していなかった田中さん(報道の影響でしょうか、先生や博士よりしっくりきますので、さんとしました。)は、今回のノーベル賞に結びついた発見について、「偶然」という言葉を使ってその経緯を説明しています。しかし田中さんや他の受賞者の言う「偶然」とは、本当に「偶然」なのでしょうか?

小柴博士の「常にそのテーマについて深く考え続けること」江崎博士の「何ごとにも縛られない自由な発想を持つことがまず大切である」これこそが、それぞれのテーマは違っていても受賞者に共通の点であり、「偶然」をもってノーベル賞に結びつける偉業を成し得た秘訣かもしれません。常にそのことを深く考えているからこそ、偶然を見落とさず今回の受賞に繋がったものと思います。つまりこの偶然は、「必然的な偶然」のような気がするのですが、いかがでしょうか。

ブラックボックス

建築設計においても、設計を依頼された建築家は、まず自由な発想で、常に頭のどこかにそのテーマを持ち深く考え、プランニングやスケッチを繰返す。すなわち敷地やお施主さんの要望、その他の多くの条件を整理し深く学習していることに他なりません。その学習が深くして初めて、そのプロセスを論理的に説明出来ない「偶然」(俗に言うブラックボックス)を経て、新たなアイデアやデザインが生まれてくるのではないでしょうか。

もう一つの住宅建築

住宅を建てようと考えているみなさん、敷地や予算、現実的な制約を逆手にとるような自由な発想で建築を考え、そして作るプロセスを建築家と共に共有し、自分にとって真に納得のいく建築を楽しんで作る。そんな「偶然」を見つけてみてはいかがでしょうか。

住まいの話題[42]執筆者
■森田 達也(もりた たつや)/(有)エム・ティー設計

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