■住まいの話題[46]:家を建てるということ
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人が家を建てる機会というものは人生のうちに何度とあるものではありません。だから「家を建てる」ということが、その人にとってなんらかの意味を持ってほしいと考えています。
家をつくる

家を建てようというとき、往々にして漠然と間取りを決めていってしまいがちです。しかし、本質的な意味で家に何を求めるかを明確にすること、そして、それについて真剣に考えることは非常に大切なことです。家を建てるときというのは、家というものについて考えるためのよい機会です。家をつくるということは、家族のこと、生活のこと、将来のこと、それらを明確に定義して再構成し実体化を図るということだからです。

建主は、家を建てて自らが望む家族の生活スタイルを実現し、それまでの不満や障害を払拭しようとします。家は家族のためもので、家のつくりというものは、多少なりともそこに暮らす家族の関係に影響を与えます。もしも大切な家族の関係が、家というハードの問題で悪くなるというのならば、それはとても残念なことでしょう。

住宅に限らず「建築」が他の購買物と大きく異なるのは、非常に高額であること、そして土地に定着し、長期にわたり使い続けていくものだということでしょう。買ってみて気に入らなかったから買い換える、ということは簡単にはできません。それ故に建主は家を建てるときには、普段考えることのなかった様々なことを考え、どのような家にするべきか悩むこともあるかと思います。

デザイナーズマンションの流行とともに、「建築家」が設計する住宅もメディアに多く登場するようになって、あたかもファッションのように建築が捉えられている傾向もあります。しかし、見た目のデザインだけに気をとられると、大きな失敗を犯すことにもなりかねません。建築のスタイルにも流行があり、時代とともに変わっていくものです。ですから、あくまで自分が望むことをまず第一に考え、将来の存在する時間を見据え、流行だけではない本質的な価値のあるものをつくるべきなのです。

ふたりの子をもつ母の家
家中から子供を見渡せるプラン
クライアントとして

ほとんどの場合、家の設計を進める段階では、建主のなかで家に求めていることは非常に漠然としています。設計者として住宅の設計を進めていくと、そのようなものがプランのやりとりを通じて、だんだんと見えてきます。そういったものをうまく引き出していくということも設計者の能力のひとつですが、建主自身も「クライアント」として、最初にそれらの目的について考え、方向付けをすることは非常に大切なことです。建築家はその目的に対して様々なアプローチから解決を試み、その目的を達成させるのです。

建築家があたかもヒーローであるかのように振る舞い、建主が建築家の「先生」にお願いして家の設計をしてもらう、という関係ではよい家はつくれません。建主の負担で建築家の「作品」をつくられてしまうことにもなりかねません。お互いが対等に主張しあい、ぶつかりあってこそよい家ができるのです。

すべて、最終的に決定するのは建主です。建築家は決定するためのひとつの道筋を示しているに過ぎません。

考えること
家は、その家族だけのための一品生産のものですから、常識や固定観念にとらわれる必要はまったくありません。家を建てる家族の数だけ、目的や要求とその解決方法があるのです。すべてのケースが特殊解だといってよいでしょう。建主がそういったことを考えるプロセスは、「自分探し」と似たようなものかもしれません。住宅は「自分」が望むもの、「自分」がリアリティを持てること、をあらためて考え直してつくりあげるものなのです。
住まいの話題[46]執筆者
■大江 弘之(おおえ ひろゆき)/大江弘之建築設計事務所

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