■住まいの話題[47]:「誰もが持てる最初の家」という考え方
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16回目の引っ越し
最近16回目の引越しをした。サラリーマンの転勤族の家庭で育った僕は2、3年に一度引越しをくり返した。独立してからも引越は習慣になってしまったようだ。16回目でやっと自分の家に住むことができた。自邸を建築したのだ。しかし、理想や夢を実現させたというより、素直に今の僕らの生活にぴったりなものを作ったという感じだ。理想の家は次かその次に実現すればいい。とにかく最初の一歩を踏み出すことが肝心だ。設計中にこの住宅を、初めて家を建てる人のプロトタイプにしたいと考えるようになった。コンパクトでシンプルでリーゾナブルでかつ空間のある、誰もが持てる最初の家をLVHと名付け、その試作住宅として自邸を位置付けたいと。
家は一生に何回かのリーゾナブルな買物
妻は家賃が勿体無いと言い続けていた。計算してみると年間約180万円程度の家賃を7年間払い続けていることになる。あと5年で? 「家は一生に一度あるかないかの高価な買物」というコピーに知らぬ間に乗せられていた。たとえば自分の両親は、転勤のたびに家を買い替えた。まわりにいる人やクライアントも、40歳前に家を建てた人は何度か買い替えたり建て替えたりしている。しかも、いまなら住宅ローンは家賃より安い。
土地を探しに
土地と建築の予算は2000万円。10年ほど住めば元はとれる。そういう甘い考えで1000万円の土地を探しに出かける。都心近郊でも僕たちの予算に近い価格で、あることはある。晴れた休日ごとに、ピクニック気分でいろんな土地を見に行き、その間貯金をこつこつ続けた。安い土地はどこかに難点があるが、ようやくこれならと思える土地に出会ったころ、貯金とローンの金額を少し増やせば購入可能になっていた。
最初の家(LVH)の外観
最初の家(LVH)の内観
どういうところに住みたいか
まず、どういうところに住みたいかを各自レポート提出。それをもとに何日も話し合いをして共通の標語を作った。ローコストで高品質。一般的な材料の使い方を工夫した美しい空間。光の入り方がきれいで時間や自然のうつろいを感じる。空間のつながりがゆったりと感じられる。空間が気持ちよい浴室。ペットがいるのでそれも加味する。そして土地が決まり設計を開始。
設計とお金と時間
このプロジェクトは自邸であるが、LVHシリーズの基本を確立するというテーマがあった。ディテールや仕様を共通にすることで概算見積を正確にし、設計期間を短縮し、設計料を安くすることで、少しでも多くの人に貢献したいという理想があるからだ。LVHは空間創りに重点を置きたい。余分な労力とお金と時間を節約し、住宅の本質である空間の創造に、より多くのエネルギーを注ぎ込むことが必要なのだ。
誰でも実現できるすばらしいこと
自分の家を作ることは誰にでも実現できるすばらしいことの一つだ、と今僕たちは実感している。僕自身、自分の家を持てるなんて3年前は想像もしなかった。銀行に相談に行って、「お話にならない」とか「そんなものができるならこっちがお願いしたいよ」などと言われた。そんなことが何度かあって、家を持つことは無理だと感じていた。でもある日持つことを決心し、そのように行動を始めると道は開けていった。家を持つことは当然可能だ、と断言したい。それに空間というなかなか手に入らない本当の贅沢だって可能なのだ。今後LVHという考え方を具体的な内容でみんなに提供したいと考えている。初めて家を建てる人々とこの喜びを共有できるほど、素晴らしいことはない。
住まいの話題[47]執筆者
■中島 一裕(なかじま かずひろ)/NCoA((有)建築所)

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