■住まいの話題[56]:欲しいものは何ですか?
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建築家はライフスタイルを提案する?

よく「ライフスタイルを提案する建築家」という言い方があって困る。それをすることが、良い建築家の条件のようにもっともらしく書いてある場合などはさらに困る。

確かにそのような建築家がいても結構なのだが、そのライフスタイルとやらを実践するのは建築主本人であるからして、それをタカが住宅を設計する程度の者が提案するとは、少々やり過ぎだといえないか。いや、やり過ぎだと思う。

ライフスタイルと営業トーク

ところが、そう思っている私自身が、まるでライフスタイルを提案しているかのような振る舞いをよくしてしまうのである。それは何故かといえば、建築主に結構ウケルからである。

打ち明けてしまえば、これは営業上とても効果的な方法なのである。計画案を説明するときなどは、最後に「ライフスタイル」を根拠に説明すると非常にわかりやすい。というよりも、わかった気になりやすい。そして、その際使用する「ライフスタイル」は、その時点で提案されてしまうというわけである。

ライフスタイルは売っていない

いわゆるこの「ライフスタイル」なる日本語、いつからあるのか知らないが、商品の価値根拠を示すのに誠に都合よくできている。つまり、あるモノ(商品)を買わせる動機として、そのモノが買う人のライフスタイルに照らし合わせて決定されているという理由づけができるのだ。しかも、すべての個人(消費者)がライフスタイルを持っているという前提にたっている。それを持っていないように見える人は未成熟なだけであり、成熟した現代人(賢明な消費者)ともなれば、必ずライフスタイルを持つかのように。

屋上の手スリがポイントの家
鉄道模型が走る屋上の手スリ
そして、ライフスタイル自体はどこにも売っていない。むしろ、商品の累積がライフスタイルそのものを形成するとさえ言えそうだ。だから逆に、ライフスタイルを所持するために商品を購入しつづける。
本当に欲しいものは何ですか

建築主は、当然何らかの欲求や目的があって初めて住宅建設に臨むわけだから、それを満たす計画を立てたいハズです。ただ、この欲求や目的を整理して明確にする行為は案外難しいし、難しすぎて悩む場合も多いだろう。

その苦しんでいる建築主に手を差し伸べるのが、ライフスタイルなる「ご提案」である。それならば飛びついて当然かもしれない。しかもそんな「ご提案」をせずにジッと建築主の意見を待っていたりなどする設計者は、気の利かないやつだとして、仕事を取り上げられかねない。

住宅建設の過程で、建築主が意外と混乱しているのが、建築家や工事請負者に何かを依頼したのか、そして自分では何をしなければならないのかということである。依頼していることは簡単だ。設計・監理および施工である。

そして建築主として、しなければいけないことで最も重要なのは、「何が欲しいのかを自分の力で考えること」だろう。これだけは人に頼めないから。しかし、それがホントに難しい。でもそれをサボると、よい家なんてできません!

写真は府中の家。建築主の要望で屋上の手スリに鉄道模型が走っています。要望とは実現してみると案外こんな単純なことなのかもしれませんね。

住まいの話題[56]執筆者
■有銘 祐児(ありめ ゆうじ)/有銘祐児建築設計事務所(有)

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