■住まいの話題[59]:建築家は「住まい」について何ができるか
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現代日本の原風景1(都市における「住まい」の原型1:ビニールハウス)
住むことについて最小限の要素を備えた集合住宅の例として、都会で一般的に見られる形態です。これらの「住まい」は一定期間都市の一角に定住するという意図を持った、ひとつの現実的な形態です。ショッピングカートを持ってベンチ等で起居する例は定住ではなく、「住まい」の原型としては取り扱えないものとします。
-ビニールハウスの建築
自然発生的に集合することが多く、構想から資材調達、組み立てまでほとんど住み手が行います。地下通路等雨が防げる場合は外殻を段ボールで構成することが多く、時には棺桶類似の構築物になります。公園等自然条件が厳しい場合、ビニールシート(多くはブルーの)でテント状に囲うのが定番です。段ボールによる構成の場合、時にはかなり大胆で主張の強い形態に発展することがありますが、外部ではデザインより風雨をしのぐことが優先するようです。「建築」として成立するための基本的条件である「敷地」に関して合法的な根拠がないという不確定要素があるため、耐用年数は一概に設定できません。
現代日本の原風景2(都市における「住まい」の原型2:タワー型マンション)
廊下やバルコニーが外側をめぐり水平に展開する、本来郊外型であった巨大なマンションが都心にも増えていましたが、最近、より高層な集合住宅が高級志向を伴いつつ出現してきました。古く、NHKの提供したアニメ「宇宙家族ジェットソン」に登場した未来都市では塔の頂上に乗った球状の集合住宅は、はるか雲の上に突き出ていたものです。
原型1:ビニールハウス 原型2:タワー型マンション
原型3:木造賃貸アパート(スケッチ)
-タワー型マンションの建築
タワー型の場合は、自然環境、生活、防災、防犯、健康、構造等の諸相について先端的な技術の集積によって成立する形態です。居住空間がカプセル的な完結性を持ち、その技術は宇宙ステーションや火星における「住まい」へとつながります。巨大建築となるため常に周辺環境への影響が問題となり、ニューヨーク貿易センターのような場合を避けることができるとすれば、かなりの耐用年数が見込まれるため、自己主張としてのデザインを超えた、結果としての景色について歴史的な責任が問われます。
現代日本の原風景3(都市における「住まい」の原型3:木造賃貸アパート)
原型3としては原型1・原型2の中間に位置する様々な段階や区分が存在し、殆ど全ての住まいがそれに該当することになります。たとえば木造賃貸アパートは都心から郊外まで広く分布し、人々の居住パターンの重要な局面を担っています。そのひとつとして私が担当した共同住宅の例を示します。
-木造賃貸アパートの建築
この建物はほぼ同規模の古いアパートの建替えです。建主は当初ハウスメーカーに見積り依頼しましたが、既存建物は敷地と道路の段差を利用したコンクリートの車庫の上に建っていましたが、メーカーは車庫を残しながら建替えるオプションを持っていませんでした。そこで、在来工法で対処することとなりました。外壁はコンクリート系押し出し成形板、屋根はガルバリウム葺きのかまぼこ型、鉄骨亜鉛めっきのバルコニー、広い木製デッキという、最近巷にありがちな組み合わせではありましたが、住宅街の一角に違和感なく納まっています。単身者用賃貸アパートとしては広めの居室と贅沢な水廻りを備え、内部は雲杉で造作し、居住者にとって使いやすくて、落ち着きのあるものになりました。
建築家の役割
住まいと人の関係は流動的で常に変化を伴います。その意味で建築は時間の長短の差を超えて仮設的性格を宿命的に負っています。我々建築に携わる者に何かができるとすれば、基本的に他者であることを意識しながら、「住む」ことについての多様なスタンスをもつ人々の様々な願いを現実的な条件のもとで実現しつつ、街並や歴史としての風景に思いを馳せるという、責任と夢を同時にもち続けることなのでしょうか。
住まいの話題[59]執筆者
■槙 隆哉(まき たかや)/ 槇の木設計

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