最初に手掛けた住宅の仕事は、おばあちゃん、お父さん、お母さん、子供達4人という7人、それに留学生のホームステイを受け入れている大家族の家でした。
打ち合せには、いつも上の子供二人が御夫妻と一緒にやってきました。高校生だった息子さんは、段ボールで簡単に模型ができることを説明すると、設計図を見てちゃんと段ボールで模型をつくってきてくれました。
構造は、煉瓦のセラミックブロックを型枠のように積み上げコンクリートを流し込み、阪神大震災でもびくともしなかったもの。兄弟がそれぞれに自分の家を考えて建て、そして狼という外敵に翻弄されながら、最後には3匹で丈夫な家に仲良く暮らすという「3びきの子ぶたの家」の話が、そのままセラミックブロックを使う要因でした。
実際にブロックを積む過程では、子供達にも参加してもらいました。模型をつくってきた時点から、家はすでに設計者から彼ら自身のものになっていたのです。その結果、大家族のためひとり一人が個室を持つことはできないけれど、安心できる、ゆったりとした遊びの空間のある住まいとなりました。
またこの住宅では、古い家を壊して新築するので、お施主さんから「古い柱の木は幼稚園で使うからとっておいてもらえないか」というお話がありました。現在は建築リサイクル法で特定建築資源を分別するようになってきましたが、当時は何でもかんでも一緒に壊すため、柱だけ分けるのは一手間かけることでした。個人が家庭のゴミを一生懸命分別している時代に、すべてを産業廃棄物として処理する建築業界の遅れを感じたのを覚えています。
建物を構成する材料から、日々の生活に欠かせない水まで、自分達の使った物がどこへ行くかを意識することはとても大切なことだと思います。ゴミと消えた物も、いずれは私達の身にいろんなかたちで帰ってきます。
このように、最初の住宅設計では素晴らしい体験をしました。具体的に物事に関わると、社会のいろいろな仕組みや、個人の生活が見えてきます。