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| 現在、私は海のそばで暮らしています。ここでは私の住まい方を通して、住まいの意味の一端を記してみたいと思います。 |
| 海のそばに戻る |
私の場合は生まれた時から海が近くにありました。記憶にはありませんが、おぶってくれた祖母の背中から海を見たのかもしれませんし、砂浜で、はいはいしていたのかもわかりません。とにかく、潮風に当たっていないと顔の皮膚が何となく気持ち悪いのです。定期的に海水に浸からないと自分の身体が腐っていくような気がするのです。
それでも何年か都心に住んだことがありますが、高速道路の車の音が波音に聞こえていました。高層ビルや雑踏や地下街がきらいなわけでもなく、単にあの潮風の吹く海のそばに戻りたいと思っていました。戻れなかったのは、都心からはずれると設計の仕事がなくなるのでは、という恐怖があったからだと思います。
そして今は家庭の事情もあり、海のそばにまた戻ってきて設計作業をしています。最近では近所の仕事も増えてきて、生まれ育った感情をもとに素直に無理なく設計ができるし、本来の自分に戻れたような気がして良かったと思っています。 |
| 海辺の生活者は風に敏感 |
海風には、オンショアーとオフショアーがあります。海から陸に吹く風がオンショアーでオフショアーはその逆です。オンの時は潮風なので海の匂いがします。でも洗濯物が干してあればベタベタになってしまいます。パソコンを使っている時は何となく機械が痛みそうで窓を閉めてしまいます。
陸地の温度が下がる夜から早朝にかけては、オフショアーが吹きやすくなります。サーファーはうねりの面を整え、美しいブレイクをつくるオフを好みます。このように、海のそばで生活している人は風の吹く方向に敏感です。 |
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| 海の風景:えぼし岩 |
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| 「海辺の家」の計画案 |
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| 気候風土にあわせて住まう |
私の住んでいる地域は海風ですが、エスキモーは雪、チベットの人は山、エジプトの人は太陽というように、それぞれの気候風土にあわせて生活し、そこから離れると、人は違和感を覚えるのでしょう。そして感覚の記憶のようなものに影響されていると感じている自分がなんとも嬉しいのです。
ということは、影響されたい気候風土の場所に自分から住めばよいということになります。私の場合は場所というよりも、ある好みの海風さえ吹いていれば、日本でなくても住めるような気がします。とにかくもう海からは離れたくないのです。
インターネットなどのコミュニケーション手段がいろいろ選べるようになり、情報がどこでもやりとりできるようになればなるほど、こういう感覚は意識的に残すべきだし、それは生活を楽しいものにしてくれると思います。 |
| 風がもたらす快適さ |
楽しい生活の実現を手助けしてくれる可能性をまだまだ秘めているのがウェブ環境だと思いますが、窓を閉め、ただそれのみで外部とつながっているのも、(ちょっと興味はありますが)問題かな、と思います。
いま屋根もフロントガラスもない車に乗っています。他人は理解に苦しむようですが、自分にとっては煩わしいヘルメットもなく、スピードによって海風の強さを自由に調整できるのです。そして、潮風の匂いは天候や季節によって日々変化するのです。まるで、いろいろなおいしいパスタを食べているみたいに!
これがいまの私の暮らしぶりです。暮らし方は人それぞれです。強制することはできませんが、いかがですか、こんな住まい方もあるのです。 |
住まいの話題[78]執筆者
■梅村 雅英(うめむら まさひで)/ 梅村雅英建築設計アトリエ |