■住まいの話題[82]:住を衣食に置き換えてみると夢も少しリアルになりますよ
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日本発 3つの生活基本要素
「衣食住」という言葉があります。唐突ですが、これを英語で何と言いますか? 辞書通りにlivingと言ってしまうと、「着ること、食べること、住まうこと」を並べた意図が無意味になります。かといってfood,clothing,and shelterと言うのでは取ってつけたようです。イタリア人は「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ(食べて、歌って、恋をして)」を生活の基本としていますが、それと同様に「衣食住」というのはどうやら日本人が自分たちなりに生活の基本を言い表したもので、外国から輸入された概念ではなさそうです。
置き換え可能な「衣食住」

この「衣食住」の3要素、よく考えるとなかなか味わい深い組み合わせです。

衣も食もまず素材が重要です。季節のもの/通年のもの、土地のもの/遠方のもの、健康にいいもの/悪いもの、天然自然のもの/工場でつくられたもの、速く出来るもの/時間をかけたもの。また触感(食感)や色、匂い、重量感といった要素は何より重要でしょう。

そしてそれらが組み合わされます。彩りや味・かたちのバランス、好み、大きさ(量)、そして値段が考慮されます。また何をつくるかは機能と目的次第です。急いで昼ご飯を食べたいときに懐石料理を作り始める人はあまりいないでしょう。結婚式に着ていくためにサッカーのレプリカジャージを買ってくる人もちょっと変ですね。

これらについてはすべて住宅においても同じことが言えるのです。建築もまず材料から始まります。土地で採れるものをヴァナキューラーな材料と言ったり、質感のことをテクスチャーと言ったり、天然のものに似せて作った工業製品をフェイクと言ったりと少し特有な言い方をする場合がありますが、ものを作るための要素や順番は実に「衣食住」すべて似ているのです。

構造材が室内仕上げになった家
シャッターが外観デザインになったアパート

左の写真の住宅では柱・梁はもちろん、床・壁・天井につかわれている構造材がそのまま室内仕上げになっています。服で言えば、必要でついているステッチがそのままデザインになっているような感じでしょうか。あるいはスープのパイ包みのように、香りや味を閉じ込めるためのパイが具にもなる、といった感じです。

右の写真のアパートは、防犯用のシャッターがそのまま外観のデザインになっています。シャッターに描かれている模様は、実は部屋番号になっています。

仕立屋/料理人/建築家

建築家に住宅の設計を依頼するというのは、「衣」で言えばオートクチュールあるいは仕立服、「食」の例えは難しいのですが、メニューにないものを頼んで作ってもらう感覚(料理の鉄人とかビストロスマップをイメージすると完璧ですね)に近くなります。

ここで考えたいのは、あなたは良い方に期待を裏切るプロの妙技を楽しむ感覚を持っていますか? ということです。建築家は出来上がったものをハンガーに吊るして売っていませんし、サンプルフードを店先に並べてメニューを示してはいません。与えられた条件をどう料理するか。そこに建築家の存在意義があるのであって、お皿の上の盛付けや味付けが始めから完璧に決まっているのであれば、むしろ優秀な料理人(建築家)は必要ないのです。

感性豊かで頭の回転が速い建築主ほど陥りやすい過ちは、自分が見聞きして確信を得た情報を信じすぎて建築家の忠告を聞かず、結局竣工後にそれを後悔するというパターンです。全幅の信頼をおける建築家に出会うまで足を棒のようにして「食べ歩く」ことを、まずはお勧めします。

住まいの話題[82]執筆者
■大川 信行(おおかわ のぶゆき)/ (有)東風意匠計画

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