■住まいの話題[85]:住まいの外部空間を3つの景に置き換えて考えてみる
画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。
住まい手の自己表現としての外部空間

住まいの外部空間というと庭やオープンスペースをイメージしますが、私はもっと広く建物の外壁から敷地境界線までの範囲を外部空間ととらえています。

いい雰囲気の外観をもった住まい、これを否定する人はあまりいないでしょう。でも「いい雰囲気」とは何でしょうか。3通りのパターンを考えてみました。
 (1)住宅地全体が景観としての雰囲気をもっているもの。
 (2)建物単体が雰囲気のあるデザインでつくられたもの。
 (3)人のけはいがまちの雰囲気をつくっているもの。

(1)は、行政や自治体等がつくりコントロールされる部分が大きいものです。道路沿いの生垣や緑地、外壁の色や建物の高さ、といった制限を住み手が受け入れ、それらが外観に現れることで、共通の価値観を表出させる、いわば「景観」がつくられるものです。

(2)は、つくり手の趣味や個性が外観に現れるものです。プロバンス風? 数寄屋造り? 建築家による斬新なデザイン?等のように、建物の外見を「景色」として見せるものです。

(3)では、住まい手のけはいや住まい方が何となく伝わってくるものです。通常、形には表れませんが、様々な要素が折り重なって「風景」として醸し出されるものと考えます。下町の露地などはわかりやすい例で、実際に足を踏み入れてみると雰囲気で感じ取ることができます。

外壁のデザインで外観の雰囲気をまとめた集合住宅
ランドスケープを意識した住宅
3つの景をイメージして住まいを考えてみる

3つの景が一つでもはっきり感じられると、住まいは雰囲気をもつようになります。私は3つがその場所と住まい手に相応しいバランスで働く住まいづくりを目指しています。景観コントロールのある(ない)場所を敷地として選ぶ、風向・方位、地域の規範、法的規制への応え方もまた住まい手の意志を表現するものと考えられます。窓の位置にもこうした思想がみえてきます。

このように外部空間は、住まい手の考え方を社会にまた環境に見せてしまうものともいえます。上に挙げた3つの景(景観・景色・風景)は、見る人と見られる対照のベクトルの向きが異なっていますが、住まいの外観への意識の大きさが住まいの個性とともにまちの雰囲気をつくることになります。不揃いな景観、個性のない風景、自然と社会に閉鎖的なまち、は3つの景に無頓着につくられたものにありがちな傾向といえるでしょう。

事例から:ランドスケープと住まい

左の写真は、親世帯が平屋建ての古家に住まっていたものを3世帯+3戸賃貸の集合住宅に建替えたプロジェクトです。世代や家族構成、ライフスタイルが異なる世帯の個性を重視したため、メゾネットとフラット住宅が入り組み、バルコニーも窓もすべてが住戸の個性から決まる構成をとりました。唯一外壁のパターンとして一定のデザインをつくり、色などは皆で集まって決定したため、一つのまとまった雰囲気をつくることができました。

右の写真は親子2世帯住宅の庭(親世帯が1階、子世帯が2階)で、古家の日本庭園の石をアレンジし世代間のギャップを繋ぎながら、1階の目線からも2階の視線からも楽しめる庭をつくり、花壇の中に手を加える空白(余地)をつくりました。こうした手法は、100戸を超える集合住宅の接道空間でも環境をつなぐ一つのデザインとして演出できます。建物と敷地境界線の隙間空間は、まわりの自然にもつながっているため、草花が種を飛ばしてきたりもして隣地と連続した空間になっています。

このような3つの景の集まりを私はランドスケープと呼んでいます。ランドスケープを意識した住まいは、環境・地域・個人の時代といわれる21世紀にあっては、無頓着でいられないものになっていくのではないでしょうか。

住まいの話題[85]執筆者
■山内 彩子(やまうち あやこ)/ (有)東風意匠計画

旭硝子株式会社
お役立ちリンク  資料請求  お問い合わせ  サイトマップ  ご利用環境  サイトポリシー  品質への取り組み
(C) copyright 2001-2005 旭硝子株式会社 All right reserved.