■住まいの話題[87]:住宅は自分や家族だけのものではない
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変な住宅や建物をつくらない

「住宅は自分や家族だけのものではありません。だから、変な住宅をつくらないでください。変な住宅の集合が変な街をつくり、変な都市をつくることに繋がります。日常の暮らしの中で、いつも変な住宅が視界に入ることで、人間の感性を壊し、感情を傷つけます。そこで育つ子供は、美しいものやことに鈍感になります。」と、ある建築家が言っていました。私も同じように思います。

街の中を歩いていると、変な建物が多すぎると感じます。建物だけではありません。醜い看板やサインや旗など、街に溢れています。心地よく散歩する気分になれず、そのような景観を目にしたくはないと思ってしまいます。あるマダムがそのような日本の景観について「目が腐る」と表現していました。私も同感することですが、とても残念なことです。

美しい景観はどこへいったか

しかしながら、まだまだ日本にも美しい街の景観があるところにはあります。私が生活している東京の中にも気に入っているところは、いくつもあります。しかし、とても美しいとは言えないところばかりが目立ってしまいがちなのです。なぜ、そんなことになってしまったのでしょうか。

美しい街に暮らしたい。そのために美しい街を創ろう。その意識があるかどうか。道にコンビニやファーストフードのごみを食べながら捨てていくこと。相変わらず歩きタバコでポイ捨てをする。自転車の放置。収集日以外のゴミの放置などなど。美しい街以前の意識です。

街の中と家の中、比べてみると面白いことがわかります。美しい街と美しい家の中。醜い街と醜い家の中。想像してみてください。いろいろなことを考えることができます。

北イタリアのベローナ:
街中を歩くと美しい歴史的な景観が視界の中に入り心地よい
好印象の住環境が求められる

家の窓から外の景色を眺めてみると、向かいに美しい外観の住宅が見えるのと、醜い変な住宅が見えるのとでは大違いです。毎日の気分まで変わってきます。向かいの家の外観があなたに影響を及ぼすのと同じように、あなたの家の外観が近所の人や通りを歩く人に気持ち良い印象を与えるか、不快感を与えるかについて考えてみることも大切です。もしも、好印象の家であれば、周りの方々にとって良いだけでなく、その家の住人に対しても良い印象を持つこととなり、素敵なことです。

私の記憶にある好印象の住宅の景観は、日本の季節感や自然観を巧く取り入れながら街にしっとりと佇んでいました。そんな住宅が集まって良い住環境を創っていました。今の日本の街を見ていると、私達が良い住環境を創ることをよほど意識していかないと、日本の良かったものの一つを消し去ってしまうようで心配です。

受け継がれてきた良さを生かす

ヨーロッパ、特にフランスや北イタリアに行ったときに感じることですが、建築や都市の歴史的な部分が、現在のライフスタイルと良いバランスで存在し魅力的な印象を受けることがあります。長い時間を経たものと今の生活の両方が満喫できる魅力です。

そのことは、私達にあるヒントを与えているように思います。歴史的にすぐれた文化や佇まいと、現在の私達が生活していくための場が共存すること。日本文化に育まれてきた私達の美意識を生かして、今日の欧米的なライフスタイルとフィットした景観をデザインすること。そこに魅力的な街のイメージが浮かび上がってきます。

魅力的な街で生活し、魅力的な住宅で暮らしたい。美しい景観を日常の中でいつも目にしていたい。そのために、少しずつでも街の景観を良くしていきたいと思います。まずは一人一人ができること、それは変な住宅を創らないことです。

住まいの話題[87]執筆者
■岩本 一成(いわもと かずなり)/ (有)I.K.A.総合デザイン研究所

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