■住まいの話題[90]:建築士なのですか? 建築家なのですか?
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家の施工もお宅の会社でやるのですか? 良い大工さんは会社にいますか? 色々な質問を受けますが、まじめな質問にもかかわらず笑ってしまうようなものまで・・・。

ここ数年、住宅に対する一般の方々の関心が高まり、実際に仕事をしていても、普通のサラリーマンの方が気軽に相談に来られるようになりました。昔から敷居を高くしていたつもりはないのですが、設計をお願いして家を建てようという人が増えてきていることは嬉しい限りです。

「衣」「食」に続いて、ようやく本命の「住」もブームになってきたかと思っています。一般の人々に浸透してきたのはよいのですが、本当の設計事務所の仕事、建築家の仕事を良く理解していない方が多いのも事実です。そこでこの場を借りて分かりやすく説明しようと思います。

設計・施工について

設計施工とか一括受注などという話をよく聞きますが、これにはからくりがあります。設計と施工は同じ会社が行ってはならないと、建設業法という法律で定められているからです。設計と施工は利害が反するまったく別のものです。ですから設計事務所と建設会社は同じビル同じフロアーで仕事をしていたとしても、書類上は二つの会社になっているはずです。小さな工務店も大手建設会社もそれは同じです。

昔から、良心的で腕の立つ大工さんに直接仕事を頼むという習慣がありましたから、現代でもその商習慣に基づいて看板と良心で設計と施工を行っているわけです。いい加減な設計で家など建てられてしまったら地震や火事、シロアリなど色々心配事を抱え込んでしまうことになります。

20代のサラリーマンが神奈川県葉山に建てた住宅
デザインするだけでなく現場の監理・打合わせも重要な仕事
また一方、家を建てるとなると大きなお金が動き、きちんと契約通り施工がなされているか、お金が不適正に流れていないか監理する必要が出てきます。そのための資格として、一級建築士や二級建築士の資格があるわけで、設計・監理に対処できるだけの十分な知識が必要とされます。逆にいうと、決してデザインが上手いとか発想が豊かであるとかいう能力は関係のない資格です。
では建築家というのはどうなのでしょう?

現在、日本には厳密な意味での建築家という定義はありません。名乗りたい人が名乗ればよいのです。欧米では、建築家というとその資格試験は厳しく何日に渡ることも珍しくなく、口頭試問や面接も行われている国がほとんどです。日本には現在一級建築士が約20万人程いると思いますが、これも毎年一万人程増えています。子供も含め約600人に一人が一級建築士になる勘定です。土建大国といわれる所以です。

欧米の建築家は日本の建築士と違い、社会の文化的側面での役割が多く期待され、その国の文化の担い手として優遇されているため地位が高く人数も少なく、建築家と言われる人は各国に1000人程ではないかと思います。

ある建築雑誌の編集者の話では、日本で建築家と呼べる人は500人しかいないとか。そうすると、一級建築士の400人に一人しか建築家と呼ぶに値する人がいないこととなります。新建築家協会や建築士会が、欧米並みに日本でも建築家と呼べる人を選出しようと試みていますが、どのように選ぶかなどの難問があり、日本では建築士の制度しかないのが現状です。

一時期働いていたことのあるイタリアでは、建築家の仕事は多伎にわたります。有名なバッグ屋さんも建築家出身であったり、家庭で使う様々な用品のデザインも行います。一方で歴史的街並みの保存修復を行っていたり、また一人の建築家が住宅・空港・ビルはもとより、自動車・タイプライター・電気炊飯器(日本のメーカーのもの)を同時にスタジオで進行させている様を見ると、さすがにレオナルド・ダ・ビンチの末裔だなと感心させられたりもします。

はたして、建築家制度ができたとき、日本の建築家はどのような立場になるのでしょうか。

住まいの話題[90]執筆者
■諸角 敬(もろずみ けい)/ スタジオ・アー

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