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| アメリカン・ライフ |
| 50、60年代に普及し始めたテレビの流す米国製ドラマは、経済を立て直してきた日本に豊かな暮らしのモデルを見せてくれました。マイカーでピクニック、吹抜けのある玄関ホール、ふかふかのベッド、大きな冷蔵庫とオーブンのあるダイニングキッチン。そしてカーペット敷きのリビングのソファーで愛を語り合う二人・・・。 |
| 床が遠くなった |
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そんなイメージが後押ししたのか、公営住宅の寝食分離のプランあるいは台頭してきたLDKという考え方の中でスペース確保が必要だったのか、ソファー等の家具は「○○ルーム」を演出するのに欠かせない装置となりました。
椅子に腰掛ける生活が始まると、床には家具を置くための性能が求められます。また普段、床に触れる身体の部分は足裏だけになり、冷たく硬い床のショックをやわらげるためにスリッパを履くなど、身体は次第に床から離れていきます。 |
| 日本人が座っていたもの |
| 日本では、椅子は定着しませんでした。もちろん全く無かったわけではなく、弥生時代の遺跡からは低い腰掛けが、また椅子に掛けた埴輪も多数出土しています。折りたたみ椅子に腰掛ける戦国武将の図はおなじみでしょう。外部には、待合腰掛けや縁側や縁台もありましたが、家具として家の中に入ってくることはありませんでした。身体寸法によってモジュール化された「畳」という座具が発明されていたからです。 |
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| 畳の生活(江戸東京たてもの園) |
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| 杉板張りの床(桜町の家) |
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| 畳が活きない |
日本には、室内で靴を脱ぐ文化があります。これは現在も具合良く機能しています。当初は部分的に敷かれていた畳ですが、後に建築と一体化した畳床は、歩いてよし、座ってよし、寝てよし、とマルチな性能を発揮しました。多用途に使えるので2畳の通路でお茶を飲むこともできます(写真:左)。
夏冷たく冬暖かい畳ですが、その良さを十分に発揮するためには、呼吸ができるように使うことが前提です。かつては抜ける風が湿気を飛ばし、天日干しで再び乾燥させていましたが、最近は換気扇が義務づけられるほど家が高気密化しています。核家族が増え、共働き等で部屋を長く閉め切ることも多くなりました。生活の洋風化のため畳の上にカーペットを敷き、家具を置いたりもしました。そうした生活の変化が、畳本来の性能を殺してしまっていることは否めません。
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| 軟木もいいもの |
畳以前は木の床でした。もちろん無垢板です。シックハウスやナチュラル志向に後押しされ、それが今見直されています。素足で歩くならヒノキやスギなどの柔らかい木がよいでしょう。熱を伝えにくいので冬でも暖かい感触が伝わります。また歩く時の衝撃を吸収し身体への負担も和らげてくれます(写真:右)。
柔らかいので傷はつき易く、ある程度反ったり、目やせもします。でも、それが自然の味というもの。もちろん、これらの欠点を最小限に抑えるため、加工方法や張る時期には気をつかう必要があります。直に座ったり寝転んだりしても木の感触を楽しむことができますが、膝に負担がある場合は、腰掛けを置くこともできます。 |
| たまには寝ころんでみよう |
| 床材はもちろん他にもいろいろあります。もしもあなたのリラックスのポーズが、四肢を思いきり伸ばし背中を床に委ねたものであるならば、床の感触も吟味しましょう。心地よい床に四肢を投げ出せば、立っている時とは違う世界が身体に感じられるはずです。ただし、いつも寝ころんでばかりいると、粗大ゴミ扱いされかねませんが・・・。 |
住まいの話題[93]執筆者
■高木 潮(たかぎ うしお)/ バク設計事務所 |