■住まいの話題[94]:日本人の美意識に基づいた家づくり
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日本の良さを忘れた過去の家づくり

私は街をブラブラ歩くのが好きで、仕事のついでなどで良さそうな住宅地があれば、よくその周辺などをあてもなく歩きます。新しい発見やヒントを得ることも多いのですが、同時に気にかかることも見えてきます。

完成した当時なら、さぞ奇抜でカッコ良く目立っていたであろうと思われる建築が、今や何だか色褪せて、古臭く、むしろ陳腐にさえ見え、しっとりした町並みを壊しているケースさえあります。その時、善しとされていたデザインが時間と共に、もう見向きもされなくなっている現状と、今がかさなります。

どんな家も、デザインの良し悪しに対して、未来の保証までする事は出来ません。でも、建主の金銭的な負担、設計者の純粋な思い入れやその設計作業、工事に関わった職人さんたちの膨大な作業量、そうした結果が現状の姿だと考えると,非常に空しく思えてなりません。

家は形あるものです。形あるものはデザインの対象となります。しかしながら、家は洋服や電化製品や車といった時流のデザイン対象ではないはずです。長くその場所の風景の一部として佇むことを考えると、家の基本はやはり,美しく素敵でありたいものです。

日本人の自然観に基づき庭を室内に取り込んで暮らす
日本について知れば知る程、日本人の美的感性の鋭さや文化芸術レベルの高さには驚かされます。建築はもちろん、庭園、絵画、工芸、文学、音楽等々多岐にわたり、どれをとっても世界にちっともひけをとりません。しかも、その伝統的な美は非常にモダンであるとさえ思えます。
部屋に取り込んだ坪庭
民家の縁側の現代版

建築の内部に庭(自然)をダイレクトに取込んだり、少し距離をおいて建具や柱の間(まど)に借景して立体的な絵のような効果を出したり、池のうえに月見亭を置きそこから舟に乗ったり、庭に天の橋立をつくったり、石や苔で山や滝や川や野や海をつくったり、坪庭をつくったり、盆栽を配したりなど、日本人の自然観はとても素晴らしいものです。それは、安らかな気持ちや心地よさの部分を大切にしたのだろうと思います。今のような時代だからこそ、現代住宅には大いに活かすべき感性だと思います。

上の室内パースは、そんな思いを込めたLDKだけの計画案です。オープンな食空間や居間の寛いだ空間と庭とのつながりを重視しました。内外との区切りが無いようにみえますが、実は大きな吊引戸が隠されており、普段は開け放たれています。

ここでは、料理の楽しさや食べる時の楽しさを感じてもらえるような空間を心掛けたいと思い、二つの食空間をしつらえました。開放的なキッチンと連動した食堂に加え、庭に向かったカウンター型のコーナーをもうけ、緑や風や外の空気を感じながら食べたり、飲んだり、時には書きものなども出来るようにもしました。このプランのポイントは、コーナーがこの位置でなくてはその良さが十分生かされない事です。

また、日本人の心地良い寛ぎかたはやはり床にゴロゴロです。そんなコーナーをアジアンリゾートのように窓辺に配置し、造り付けのカウチソファーで、夏は自然な風を、冬は木漏れ日での昼寝などを楽しめるようにしました。さらに、このコーナーを渡り廊下でつなげて、庭の真中に置き離れとし、庭越しに居間が眺められるよう楽しく心地良い空間にもできます。これはもう、趣味とか好みの問題ではなく、いつの時代でも通用する飽きのこない普遍価値だと思います。

日本人の美意識や自然観、心地良いと感じることを基礎において、私たちが持っている感性を現代の住宅に合うようアレンジしたり、外国の文化といい意味でクロスオーバーさせることが、これからも重要ではないかと思います。

住まいの話題[94]執筆者
■本田 好孝(ほんだ よしたか)/ (有)草設計舎

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