■住まいの話題[104]:建築の「ゆとり」と「無駄」
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辞書における「ゆとり」と「無駄」

三省堂の大辞林に載っている文章を引用すると、ゆとりは「物事に余裕があって窮屈でないこと。余裕(あせらずゆったりとしていること。余りのあること。ありあまること。)」。無駄は「しただけの効果や効用のないこと。役に立たないこと。また、そのさま。無益。」とある。

「ゆとり」と「無駄」の使われ方

一般的なゆとりの使われ方は、ゆとりのある空間を造る、ゆとりのあるプランニング、ゆとりのある生活・・・。余談として、ゆとりの教育といって、日本の教育を地に落とすやからもいる・・・。

一方、無駄の使われ方は、無駄な空間は造らない、無駄なコストはかけない、無駄は省け・・・。余談として、平成の世の中、未だ税金の無駄遣いは収まらない・・・。

このように、文章の上では文字通り、ゆとりは善玉で、無駄は悪玉のようだ。では、建物設計の上ではどうなのだろうか。住宅の導入部と接続部における例で考えてみたい。(以下の例では、無駄な要素を〈 〉で、ゆとりを引き出す手法を“ ”で表現した)

導入部での「ゆとり」と「無駄」

写真1は、1階が親所帯、2階が子所帯である完全分離型2世帯住宅の玄関ポーチである。〈大きな外部吹き抜け〉を造り、導入部に“アクセント”をつけている。具体的には、〈平らなガラスの屋根〉“空を感じさせることが必要”、〈左側の大きく切り取られた壁〉“外と内とを区別することが必要”、〈株立ちの百日紅〉“高さを感じさせることが必要”、の3点である。かようにここでは、視覚的に外と内を、1階と2階を繋いで広さを感じさせ、感覚的には余裕と趣を引き出している。

写真1:完全分離型二世帯住宅の玄関ポーチ
写真2:住宅のホール・ギャラリー
接続部での「ゆとり」と「無駄」

写真2は、住宅のホール(廊下)である。右手前のキャビネットには食器や民芸品等が並べられ、壁にはピクチャーレールを使用して絵画やリトグラフや絵皿が飾られている。具体的には、ホールは〈ギャラリー〉“通路の機能に、溜りの機能を付加”、絵と同様な〈見せる階段と大開口部〉“上階への繋がりを予感”、天井は〈高く(CH=2,700)、壁と同じ材質〉“奥行きとボリュームを見せる”、の3点である。ここでは、視覚的に広がりを感じさせ、感覚的には遊空間として価値観を高めさせている。

建築の「ゆとり」と「無駄」

人間の感情や感覚に訴え、刺激を与え、感動をもたらす建築には一見無駄に思える部分がある。が、よくよく観察すると、そのひとつひとつは緻密に計算された要素・手法であることが多い。単に機能性だけでは表現されていないし、そこには建築家の強い意思が反映されている。そういう意味では文字通りの無駄ではない空間なのである。かといって、手法や策に溺れてしまっても嫌味なものになってしまうので程々にする必要はある。

建築的なゆとりとは感覚的にそう思わせる空間を作り出すことにある。その空間の中においては、人の感情はゆとりから安堵へと移行する。

これから家を造られる皆様へ

住宅は依頼者とその家族のオリジナルな建築ですから、自分たちの個性を生かしてくれる建築家に依頼し、あわてず・じっくり、ゆとりを持って、全てにおいて無駄の要素が意味を持つ家を、そしてゆとりのある家を造ってゆく事をお勧めします。

住まいの話題[104]執筆者
■塚田 和徳(つかだ かずのり)/塚田和徳 建築アトリエ

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