■住まいの話題[106]:居心地のよい家づくり
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住宅に求める基本的な条件として大切なことは「居心地のよさ」ではないでしょうか。当然、居心地のよさには個人差があります。ここでは、厳しい住環境や法規制により限られたボリュームの中で、いかに快適な空間をつくるかのポイントを幾つか挙げてみました。

取り込む

外部空間をうまくとり込み、内部空間と一体のものとして位置づけることで、空間に奥行や広がりやゆとりを与えてくれます。つまり「自然を感じる家」です。一日室内にいてボーっとしていても、時刻によって白い壁が夕陽をあびて赤く染まるなど、時間の流れや光の移動が家の中にいても解るような、変化を常に感じることのできる楽しい家となります。

透ける

透けるとは、内部・外部を問わず、双方向からの視覚、つまり「見え方」を調整することです。はっきりとした境界をつくらず、境を曖昧にすることでもあります。仕切りはあっても、それを住まい手が自由に設置し操作できるように構成されていれば、奥行感を出したり光や風を通すことが可能となり、人間の五感に心地よく作用し、空間に快適感を生じさせます。

つなぐ

つなぐとは、単純に壁や床の一部を取り去ることで空間を拡大させ、視覚的につなげることです。水平方向だけでなく垂直方向にも広がりが生まれます。個室をたくさんつくるのではなく、間仕切り壁をできるだけなくすようにすると、機能的にも多用途に対応できる空間が生まれます。

大きな開口

開口は、その取り方で空間の全てが決まるといっていいほど重要な要素です。敷地に合わせて「一番気持ちのいいところ」「外から覗かれず、中からは見たいところだけ目に入る場所」に大きめの開口部を設けることで、景色をより堪能でき、自然を身近に感じることができます。

居室の間を外部空間がつなぎ、
大きな開口部によって一体となる
天井の高さにメリハリをつけ、
同時に光と風の道をつくる
高さより変化を

よく、天井は高いほどよいと思われている方がいらっしゃいますが、気持ちよい空間として感じる要素は、天井高のみが問題なのではなく、床の広さと天井の高さのバランス、そして高さのメリハリに関係しています。空間を移動しながら感じるそのメリハリがリズムをつくり出します。低い所があってこそ、高い所の解放感もより強調されるものです。

回遊させる

動線を一つの型に限定することなく、幾通りかのアクセスを用意すると、生活のリズムに変化が生まれます。回遊できるような遊びの部分があれば、部屋を単に大きくするよりも、実際以上の広さが得られ、使い方の可能性が広がっていきます。

風と光で室内環境をコントロール

気候の穏やかな日本では本来、空調機を使わずに過ごせる時期が長いはずです。上から差し込む光や、温度差によって下から上へ流れる風は気持ちがいいものです。立地や気候に応じた断熱を施したとしても、光と風で室内環境がコントロールできるような、人が本来持っている五感の働きを取り戻すことができる「ローテク」の家づくりも捨てたものではありません。

私はこうした点を踏まえながら、豊かで変化に富む空間の創出を常に心がけています。しかし、一軒の住宅でこれらの要素すべてが完璧なかたちで成立するわけではありません。それぞれの要素のどれかが強かったり弱かったりします。いずれの場合でも、幾つかの要素の相乗作用によって効果がはっきりと現れてきます。

どのような「居心地のよさ」をつくるかは設計者だけが考えるのではなく、住まい手側も要望の中で本当に必要なものは何かを、経済的可能性と照らし合わせて考え、それを基に選択することが必要です。住まい手がその選択をスムーズに行えるよう手助けできる事柄を的確に提案していくこと、それが我々設計者の役目だと考えています。

住まいの話題[106]執筆者
■柏木 学(かしわぎ まなぶ)/ カシワギ・スイ・アソシエイツ

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