■住まいの話題[107]:私の住宅設計スタイル
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ある住宅設計の仕事、それは1本の電話から始まる。昔からの知人、Y氏より電話。「引越しのお知らせ届きました。鎌倉ですか、いいですね。(中略) 住宅を建てたいと土地を探しているOさんという友達がいるんですけど、豊田さんを紹介したいのですが、いつの時点で会って頂いたらいいですかね」。私は「設計させて頂けるのであれば土地探しの時点で会えたらいいですね」と。「では来週、時間とって頂いてOさんに会ってもらえますか?」Y氏は応える。

始まり−1

もちろんO氏とは初対面。がそこにはY氏とO氏の信頼関係があり、Y氏と私との信頼関係がある(Y氏には確認していないが)。この二つの関係でO氏は初対面で信頼とまではいかないにしても、私のような者を正面から見てくれる環境にある。このことが私とO氏との信頼関係をこれから築く礎となってくる。私はアイデアを出すことよりも、この人(ご夫婦)との信頼を作っていけるのか、また築いた信頼を壊さないかというプレッシャーと向き合う。そして要望把握には何よりもO氏夫婦を知ることが大事となってくる。

始まり−2

土地探し。この件はファックスでのやりとりを繰り返し十分な分析をして1ヶ月ほどで確定した。人によるが、一生に一度の大仕事、精神的に参ってしまう人もいる。その辺りのこともなるべく協力しようと十分に話し合う。こちらもO氏夫婦の大事業の一部のお金を頂いて参加しているため、真剣に諸問題と対応。

それから毎週土曜もしくは日曜日に打ち合わせ。図面と模型を使ったプレゼンテーションで打ち合わせを進めていく。彼らの要望や日常生活に対して、私のスパイス/隠し味を加え納得してもらうまで話し合う。1〜2ヶ月の打ち合わせで基本計画決定。その後、確認申請の準備にとりかかる。

事務所からの風景:建物の向こうが由比ヶ浜
自宅の庭:こちらも大切な事務所
始まり−3

実施設計に入った時点で「Oさん、今度打ち合わせを兼ねて鎌倉へいらして下さい。庭でバーベキューでも如何ですか?」と提案した。O氏の返事は「喜んで」。Y氏夫婦もお誘いしたところ、Y氏は仕事で来れず、奥様だけが参加。当日、小雨が降り外でできるか微妙であった。私は「天気の様子をみながら内の中で始めますか?」と声をかける。

まずはシャンパン、そしてO氏夫婦より頂いた日本酒。バーベキューにと肉・魚介類・野菜を前日に用意。料理担当は私。普段は可能な限り自分で料理を作っている(妻の料理が美味しくないという訳ではない)。ストレス解消にもなっている。とりあえず、特製ドレッシングのサラダと姫サザエの煮物をつまみに。簡単な打ち合わせを済ませて、もう外では無理と判断して料理に取りかかる。肉料理、魚料理・・・。「豊田さん、設計の仕事やめて料理人になったらいかがですか?」とO氏が言う。同じことをたまに妻にも言われ、嬉しいやら嬉しくないやら。

O氏夫婦、Y氏夫人、よほどお腹が空いていたのかそれとも料理が気に入ったのか、相当な量の食材を用意したにもかかわらず、完食。私は大満足であった。結局、飲んだのはシャンパン1本、日本酒1升、ビール、ワイン・・・。妻もいつものように2階で一足お先にお休み。O氏といえば、PS2の昔なつかしのインベーダーに夢中。「もう帰るわよ」と夫人に促され帰途へ。後でお話を聞いたところO氏は途中から記憶がなかったようで。暫くしてメールで伝えてきた「豊田さん、2面クリアしました」。インベーダーは本当に好きなようでした。

これでおもてなしができたのかと疑問に思うところもありますが、工事竣工までそして引き渡し後も、O氏夫婦とのお付き合いが楽しみです。

大学院卒業後、独立9年。都内から鎌倉に移って2年目に入る。これが私流の住宅設計のやり方。ところで、住宅設計の仕事の始まりっていつ? クライアントと会った時? 工事着工時? 実は建物が完成してからが始まりなのでは。

住まいの話題[107]執筆者
■豊田 功(とよだ いさお)/ エー・ラインズ

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