■住まいの話題[108]:建て物は生き物
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普通の家

新しい人と出会った時、その人を第一印象で特定のタイプに予測しがちですが、お互いに付き合ってゆくうちにその人独特のものが見え隠れしてきます。プライベートな空間を作り上げてゆく作業である住宅設計では、表面上の付き合いは次第にくずれ、その過程の中で打合せが重ねられてゆきます。

結果として全てを満足するのはなかなか難しいことです。でも優先順位を決めて一つずつ克服してゆく、あるいは一つのアイデアでそれまでの要望をまとめ上げてゆく過程は、とても感慨深いものがあります。そうして出来上がったものは「普通の人」「普通の家族」がいないのと同じように、普通の個人住宅など有り得ないのです。

多様なデザインと進化

不特定多数が利用する施設と違って住宅は特殊な建物ですから、細部まで含め様々な可能性があるはずです。別の見方をしてみると、たとえば、植物・動物・昆虫・人体・細胞など、数億年かけて進化してきた自然界には多種多様な特徴をもった完成形があります。その構成やデザインは建築と比較しても共通点がたくさんあります。

自分の体重・プロポーションを支える骨格としての構造架構、内部空間を包み込み外部環境と情報・物質を交換する皮膚や目となる外装や開口部、異性を引寄せるための色彩豊かな装飾、情報や物質を必要なものに変換し内部の各部分へ移動または排出するための設備。それら全てが置かれる環境に適応し、自身の特性に必要な部分のみ合理的にデザインされています。

フツウノカゾクハイナイノデス
フツウノイエハナイノデス

中でも設備デザインは、少し前までは考えられなかったことが実現しています。エネルギー面でのリサイクルや燃料電池や、通信面でのTV・インターネットの進歩と普及などです。設備以外ではそれほど進化していないのではと思われます。しかし現代の進化過程でみると、仕上げ・構造・設備の垣根がなくなりつつあるし、屋根や壁そのものも外部から身を守るだけでなく、光・風・視線を調整できるデザインになってきています。いっそうのこと、柱・屋根・壁という考えを捨ててしまったほうが、合理的な建物になるのかもしれません。

今後、技術が一層進めば、夏は風通しが良く冬はコートを着るように「厚みが変化し必要な時に穴が開き透明になる建築素材」、「普段は細くて薄いけれど地震や台風の時にだけ硬くなる素材」があれば、内部をもっと有効に計画でき、簡単に階を重ねることも可能でしょう。また宇宙開発の技術が発展すれば、雨風を遮断し適度な視線が得られる画期的なスクリーンで、屋根や壁すらも無くすことができるし、重力を克服できれば地面すら必要なくなります。さらに時間が自由になれば「どこでもドア付住宅」なんてものも夢ではないですね。

適応した住宅

話を元に戻すと、現代の建築では構成するそれぞれの材料やそれを組立てる道具がある程度規格化されています。そのため不思議な形にすることやしなやかに動かすことは、今の技術では少々難しい面があります。でも昨今の建築技術には様々な工法・材料の選択が可能です。

住まいに対する見方を変えれば、新たなプランの可能性だってあります。細部にこだわるという意味ではむしろ住宅設計のほうが適しています。ある植物が周辺環境に合わせて長期間進化した後、その場に適応しているのと同じようなプロセスで、特定の家族が住まうために、特定の場所に自分達だけの住宅設計ができる可能性は十分にあるのです。

住まいの話題[108]執筆者
■橋本 健一(はしもと けんいち)/ARCHI・CONNGE(アーキコング)一級建築士事務所

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