■住まいの話題[110]:建築家と家を建てるということ
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家を建てよう

建築家と家を建てるということと、テレビや自動車といった商品を買うことの、決定的な違いがひとつあります。それは金額の大小といったことではなく、契約する時に「その商品があるか、ないか」ということです。

自動車なら、実際に自分が受け取る現物はそこになくても同種の展示物がありますし、テレビやパソコンならその場で持って帰れます。でも建築家と家を建てるとなると、その日に引越しが出来るどころか、その家はまだ建っていません。図面すらありません。

また、住宅メーカーの家ならばモデルルームがありますし、建売住宅ならそれこそ現物があります。したがってこの場合は、家を購入するという同じ行為ではあっても、建築家と家を建てるという行為とは根本的に違う分野に属します。

つまり、建築家と家を建てるということは、多くの人が今までに経験したことのない分類の行為だと思います。

さぁ大変だ!

建築家と家を建てるという時は、まだ何もないものに関していろいろ決めていかなければなりません。残念ながら、出来上がってから考えるということは許されません。そして、既製品ではありませんので、全く同じものはどこにも存在していません。

計画の段階では、図面やCGやイメージ写真など、様々用意して検討しますが、それらは全て経験に基づく想像力を駆使して始めて意味を持ちます。でも、それを全て施主に求めるのは甚だ酷な話です。また、決めなければならないことは大小あわせて数万とあります。認識するだけでも大変なことです。というより、率直に言いますと無理な話です。

ならどうするか? そこに建築家がいます。

囲われた空間の例
開放された空間の例
それでも螺旋階段がいいですか?

設計過程では施主から、例えば、こんな要望が出てきます。「吹き抜けが欲しい」「螺旋階段がいい」「中庭が欲しい」。ここでちょっと考えてみてください。なぜ吹き抜けが欲しいのですか? なぜ螺旋階段が、中庭がいいのですか?

多分それは、何かの雑誌やテレビで見て、それが素敵だったということでしょう。でも、その家とこれから作る家は違います。敷地も環境も住む人も全く違います。開放感が欲しいのなら吹き抜けではないという解答もたくさんあります。そもそも、なぜ開放感が欲しいのかということも、結構重要なことだったりします。それと、螺旋階段は意外と生活を窮屈にするし、郊外型の景色のいい敷地にわざわざ中庭っていうのも不思議なものです。

確かに、要望の全てを含んだ家を作ることは可能です。でもそれが施主の本当に求める空間になるとは限りません。「あれっ」てなことになることは往々にしてあります。だって、螺旋階段をアクリルケースに入れて眺めているのとは訳が違うのですから。

だから、考えなければならないことは吹き抜けや螺旋階段や中庭といった「個々の形の結果」ではなくて、「施主自身がどんな風に生きたいのか」と関わりのある夢であったり希望であったり、そういったものだと思います。

建築家を買ってください

建築家と家を建てるということは、ただそのアイデアやプランを買うということではなく、その人の人間性や性格、そんなものを含めて「建築家を買うという行為」だと思います。そして、依頼する建築家と一生付き合っていく、そういうことだろうと私は思います。

住まいの話題[110]執筆者
■宮田 聡夫(みやた としお)/ FIELD NETWORK Inc.[フィールドネットワーク]

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