■住まいの話題[114]:「家をつくる」ということ
画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。
わたしたちは「家をつくる」という言い方をします。ところで、建て主にとって「家をつくる」ということは、どういうことでしょうか。設計者は、家を設計します。施工者は、家を施工(工事)します。では、建て主は何をするのでしょうか。
建て主が考えること

「家をつくる」ときに、建て主は、これまでの生活を振り返り、これからの生活について展望します。「陽射しの良いところで昼寝したい」、「こどもの様子を感じながら暮らしたい」、「大勢の友人と我が家で酒を飲みたい」、「ときには一人でくつろぎたい」、「あの山を眺めながら風呂に入りたい」、「喧騒から離れてほっとしたい」等々。こうした思索をめぐらせることこそが、建て主にとって「家をつくる」ということです。

どのような生活をしてゆきたいか、よく考え、よく話し合ってください。はじめは難しいと感じられるかもしれません。どのような生活? あまり考えたことがないからよくわからない、考えるきっかけがないからやりにくい、ぜんぜんイメージがわかない。そういうときには、こどもの頃を思い出してみたらいかがでしょうか。秘密基地をつくりませんでしたか。家の中にお気に入りの場所はありませんでしたか。将来の家を描いてみませんでしたか。それらは、どのようなものでしたか。

設計者に伝えること

どのような生活をしてゆきたいか、だんだんとわかってきたら、それを設計者に伝えてください。そのときには、できるだけカタチではなく、住まい方としてお話しすることをおすすめします。たとえば、「20畳のリビングがほしい」というのではなく、「家族でわいわい暮らしたい」、「大らかな開放感がほしい」、「ほとんどの時間をリビングで過ごす」等々。設計者は、建て主が口にされる要望の奥にひそむもの(なぜこうしたいのか、ということ)を大切にして、あれこれ考え、最終的にカタチとして提案します。建て主が最初からカタチを口にしてしまうと、設計者の大事なしごとを奪ってしまうことになりかねません。

こどもの様子を感じながら暮らしたい
(中庭による連続感・一体感)
火を眺め、火で暖をとり、火で調理したい
(囲炉裏を中心に計画)

ときどき間取り図をみずから描く建て主をみかけます。もちろん、描くことを楽しむことは設計者だけの特権ではありませんから、建て主がやってはいけないということはありません。けれども、自分の案にこだわりすぎて新しい提案を受け入れられないことには問題があります。専門家である設計者の提案に耳を傾け、設計者の考えを最大限引き出しながら、自分の「家をつくる」ことが大切ではないでしょうか。

間取り図と同じような図面に見えるかもしれませんが、設計者の提案する平面図は、周辺環境との関わりを考慮して断面図や模型での幾多の検討を踏まえた提案なので、一見の価値はあるはずです(そうでなければ設計者なんて必要ないかもしれません)。

建て主から教わること

設計者は設計の専門家ですが、住まい方について最もよく知っているのは建て主です。設計者が建て主から教わることも数多くあります。たとえば、収納。家に対する注文のなかで最もよく挙げられるのが「たくさんの収納」といえます。設計者はいつも十分な収納を心がけますが、ある限度を超えると「ものが豊富にあればよいのではなく、自分にとって必要なものを選んで大事に使うこと」が大切なのではないかという考えが浮かんできます。

そこで、提案します。「ものを整理しませんか」。整理できるもの/できないものをひとつひとつ検討していくと、整理できないもののなかには「記憶に結びつくもの」があることがわかります。設計者はこれを大切にしないといけないことを、建て主の方々から教わります。

建て主、設計者、施工者が誠実に「家をつくる」。まず、それぞれの役割をきちんと果たすことからはじめましょう。

住まいの話題[114]執筆者
■仲 綾子(なか あやこ)/ 仲建築研究所 nakatan atelier

旭硝子株式会社
お役立ちリンク  資料請求  お問い合わせ  サイトマップ  ご利用環境  サイトポリシー  品質への取り組み
(C) copyright 2001-2005 旭硝子株式会社 All right reserved.