■住まいの話題[115]:漠然とした空間をつくろう
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家を建てるまでにずいぶん勉強した方から設計を依頼されることが多くなりました。しかし、世の中にはさまざまな情報が氾濫しているために、知識を整理することが難しくなっています。また、ある一面のみを信じて疑わないなどのケースもしばしば見受けられます。機能的な問題や性能上の疑問は、直接話してみると解決することも多いのですが、個人的な指向(趣味)と出来上がった空間とのバランスは上手くとりたいものです。

ここでは、家づくりに関して、どのようなスタンスで取り組めばうまくいくかを、住空間デザインの視点で考えてみます。

機能とかたち

「住空間を構成する部分(パーツ)にはそれぞれ機能があります。外部であれば屋根をはじめ外壁、窓、玄関ドア、バルコニーなど。内部であれば間仕切り壁、床、天井、階段など。それぞれが機能を持つと同時に形として存在します。建築家はそれらを全てコントロールしながら住空間を創造していくのですが、デザインをどの程度まで表現していくかが、気持ちの良い空間を創る際の重要なポイントであるように思います。

デザインを主張しない「かたち」

下の写真はヨーロッパのある街の風景です。緩い曲面壁の上部には小さな窓が一つだけ象徴的に付いています。装飾という意味では全く素っ気ない建物ですが、よ〜くご覧下さい。この単純な形に我々建築家は非常に興味を持ちます。壁と屋根と窓が微妙にバランスとれていて「風景の中にとけ込んでいるな〜」と感じるからです。飾りものがそれ程なくても、気になる形の中には、作り手の意図が隠されているのではないでしょうか。

とある住宅の風景
打ち合わせ時のスケッチ

インテリアの打ち合わせをする場合、プレーンな模型と着色していないフリーハンドのスケッチをいくつか用意します。そこには、仕上がった色や具体的な材料や詳細な納まりなどはあまり表現していません。色とテクスチャーにこだわらず、自由に空間をイメージしてもらうことが目的だからです。このヴァーチャルな空間にお気に入りの家具を置いてみたり、絵を飾ったりするとどうなるのか、いろいろ想像しながら意見を交わせればよいのです。

可能性を秘めた漠然とした空間

私たちが日頃使う道具・家具・電化製品はデザインにあふれています。いわゆる工業デザインです。それらのデザイン品を包み込む住空間はどのようなものがふさわしいのでしょうか。生産という意味においては、工業デザインと建築家のデザインは対極にありますが、空間の中ではそれらが微妙なバランスをとることがポイントとなります。グッと堪えて、目に見えるデザインは控えめにし、空間の仕掛けとして隠しておきます。一見して、飾りの少ない漠然とした空間になるかもしれませんが、多くの可能性を秘めています。私はこの「漠然とした空間」を創ってゆきたいと考えています。

「この家では住み手のセンスが求められているなあ〜」という台詞を住む人達から完成間近に聞くことが多いのですが、その瞬間、こちらとしては心の中でほくそ笑んでいるのです。しかも、仕掛けが後でじっくり効いてくることを楽しみに・・・。

家をつくる方法としての「分離発注方式」

家づくりでは一般的に、工務店との間で一括の請負契約を結びます。分離発注方式はそれを細かく分けて、工事内容に応じて専門工事業者に発注したり、建材を直接購入したりします。そうすることで、コストが透明になります。また必要のない経費を省けるので、適正な価格で家づくりが出来る仕組みです。

建築家がこの方式に関わることで、従来の方法と何ら変わりなく「漠然とした空間」を創ることは、もちろん可能です。いかがですか、試してみる価値は充分にありますよ!

住まいの話題[115]執筆者
■御前 好史(みさき よしふみ)/ みさき建築研究所

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