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| 街歩き |
私は、街を散歩するのが好きで、最近は時々新宿の北の端や西の端を歩きます。ヨーロッパの街のように、新旧がしっとりと調和している街並みはもちろん魅力的ですが、一見どうということのない街でも、気になる道や路地を散策すると結構楽しめます。
都庁のある超高層群の外側を取り巻くその地域は再開発の手が伸びており、立ち退きを余儀なくされた住民たちに捨てられた、もの悲しい風景に出会います。でも昭和初期に建ったであろうによく手入れされた、下見板張りの古い家屋が更地にぽつんと取り残されているのを見つけると、すっと背筋を伸ばす気持になります。幾度も増築された結果、巨大な建築と化した貸しスタジオでは、芝居や映画のポスターが貼られ、人が行き交い、温度を感じます。
ここもやがて誰もいなくなり、六本木ヒルズやお台場のような街に生まれ変わるのでしょうか。再開発は豊かなシティライフが目的ですが、どこか白々しく、別の豊かさを失うように思います。
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| 建て主の役目、設計者の役目 |
家づくりにおいても同じ事があてはまります。戦後、アメリカンライフにあこがれて、リビングという部屋が日本の住宅には欠かせないものになりましたが、近頃ようやくそのスタイルとは違う暮らしの空間があることに多くの人たちが気づきはじめています。大きなソファセットよりも大きなダイニングテーブルがあれば、家族揃っての楽しい食事が出来ます。ソファに座るよりも床に寝ころんでテレビを見たりしていませんか。住宅史のほんの現代の期間においても、試行錯誤や迷いがあるわけです。 |
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| ドイツの街:歴史を積んだ街並みに未来的なモノレール |
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リビングのない家: 蹴込みのない階段は光も音も通します |
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以前、計画した小さな住宅では、施主の方に「ウチは大きな子供が3人いて、それぞれの個室を作ることが大切だから、リビングはいりません」と言われ、1階から3階まで声が通る階段と、階段の周囲には個室にあるべき物がはみ出しているような家を設計しました。この依頼を受けた時に、住む人が自分のライフスタイルを把握して家づくりに臨むという、建主としての本来のあり方を実感しました。それに対し、リビングがなくても自然に家族のコミュニケーションができる家を提案することが設計者の使命だと感じました。 |
| 再生の手法 |
ここ数年リフォームとかリノベーションが話題になっています。改築は新築に比べて、住む人の生活に根ざした計画をしやすいと思います。手がける部分が限定されるので、内容を深く掘り下げ、満足度の高い結果が得られます。
新築においてもリフォームのよき手法を適用したいものです。コツを簡単に説明します。自然で楽な姿勢でいられる場所にはこだわってください。他の物には変えられない豊かさだからです。そして便利そうだからと、あまり造りこまないのが肝心です。
住んでみてわかることは多くあります。たとえば子供達が幼いときは専用の部屋はいりません。親と子が年がら年中スキンシップをしていたい時代です。個人差はあるでしょうが、子供なりに社会に参画する頃、子供部屋をどうしつらえるかを考え、やがて独立して居なくなってしまったら、親が空間を独占する。新たな家族を伴って戻ってきたら・・・・いかようにも追随出来る頼もしい住空間が大事です。
竣工した時から始まる、家と住人のつき合いに設計者もぜひ同席したい。事あるたびに過度な改装工事をせずにすむよう、初めから長期を見据えた設計をしようと思います。 |
住まいの話題[117]執筆者
■井上 揺子(いのうえ ようこ)/ アトリエ ノット |