■住まいの話題[119]:住まいの設計について思うこと
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サイエンスフィクションが描く住環境

今年の火星の大接近に触発されて、人類が火星に移住するための最初の百人が送り込まれるというSF小説を読みました。

初期の住居として、火星の土を使ったレンガと、成長の早い竹が使用される行があります。火星にレンガと竹とは、なんて原始的な材料かと、面白く思いました。人間が進歩という枷に捕われずに、柔軟にその場所に適切な素材と方法を選びだして、住環境を整えてゆく様が描かれています。そして火星においての生活条件を整えるために、環境破壊を問題視しながらも、膨大な量の氷を溶かし、胞子を蒔いて緑化を推進していきます。世界各国の百人がいながらその人間としての共通解を探し出してゆく過程があります。やがて、多くの住人が火星へ移住し、地球で住んでいた地域と同じような環境の街が形成されてゆきます。

家に対して考えること

住宅は街の一部を形成し、街は都市の一部を形成し、都市は国家の一部を形成するものと私は考えます。家族の単位が社会の縮図であることと同様です。

家は人が形成する最も小さいコロニーを包む道具です。そこには、動物としての人を存在させる、空気と水と太陽光とを、その地域に合った方法で取り込み関係付ける必要があります。それは小さいながらも一つの天体です。その上で、人間としての要求を満たすための用途や、欲求を満たすための空間が付加されていくべきだと考えます。それと同時に、地域の一構成要素としての住宅の位置付けを模索するべきであると考えます。

建築家に依頼した店舗併用住宅:平面図
建築家に依頼した店舗併用住宅:断面図
家を設計するということ

では家を設計するにあたり、どのような心構えが必要でしょうか。私は、人から「住宅を設計する際に何を重要と考えるか」という質問を受けた時に、「耐力と機能です」と答えます。そうすると大方の人は「それだけですか?」と物足りなく感じるものです。本当はそれだけではありません。ただその中には、それ以上は簡潔に言えないたくさんの要素が含まれていて、言葉では表現できない部分が、設計者の個性や特性を発揮する部分になっているのです。それから先が、実際の設計業務に入ると考えます。

先程記した、人を存在させる空気と水と太陽光とをその地域に合った方法で取り込み関係付けるという方法は、平面という2次元の範囲だけでなく、高さ方向を含む3次元の構成が必要なので、これは建主には難しい仕事です。それでは建主は何をするのかというと、人の要求を満たすための用途や、欲求を満たすための空間を提示する役目です。

自分の生活のなかで重要であること、これから手に入れたいことを、些細なことにとらわれず本質を掴んで、できるだけ正確に設計者に伝えることです。これは図面から離れたところでのもう一つの設計という仕事です。設計者はそれを汲み取り、一つの解答を出してゆくのです。

家を建てましょう

これらの作業は、大変に体力と気力のいる行程です。苦難も伴いますが、大きな喜びも得られます。この行程をしっかりと踏んで行くことで、良い住宅を作り上げることができます。

建築家に設計を依頼するということは、とても高額であると考えられがちです。でも、プランを立て、日進月歩の材料や機器を選定し、構造を検討し、実際の現場を監理し、後の維持管理の事まで考える、設計者の仕事内容を理解して頂ければ、決して高額過ぎるものではないはずです。

さあ、建築家に家を設計してもらいませんか?

住まいの話題[119]執筆者
■鈴木 典子(すずき のりこ)/ 一級建築士事務所 典(TEN)建築設計工房

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