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| 都市と人と建築の文脈 |
国内外を問わず歴史的な街を旅すると、建築が、街が語りかけてきます。風土としての建築の存する環境、当時の文化(政治、経済、生活、技術)を。そして時の変化と成長を受け入れてきた街、時を越えて営々と生き続けている生活。どの街も、街全体としてのまとまりのある個性、各々の建物が創り出す秩序の中の多様性を備えています。
建築を設計するとき、個と全体の関係を大切にしています。個人と個人、個人と家族、家族と地域社会、地域社会と社会の関係を。つまり、建築の置かれる環境、都市としての文脈を読み取りながら(都市の文脈)、個人や家族の生活と住まいに関する想い(人の文脈)を、建築が語りかけてくれること(建築の文脈)に関心があります。過去、現在、未来という「時の風」を感じながら、時を越えて愛着の持てる建築づくりができればと思っています。
こうした考えに基づいて設計活動を展開していますが、その具体例として、ここではF邸をご紹介します。 |
| 人・街・環境への想い |
近年、健康や環境を謳う住宅が増えてきました。珪藻土などの自然素材を少しでも使えば「健康住宅」、ソーラーハウスなど高イニシャルとか機械化高スペックであれば「環境共生住宅」と、本末転倒とも思えるイメージ先行型の例をよく見かけます。
F邸は「人と街と環境に優しい手づくりの家」を設計テーマにした建物です。「人と街と環境に優しい」は文字通りの意味ですが、施主の要望、コスト、機能、性能、品質、デザインをトータルにバランスさせる中で、「人・街・環境への想い」をできる範囲で配慮した住宅です。 |
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| F邸の外観 |
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| F邸の内観 |
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| 人に優しいとは |
「人に優しい」要素は、家族を感じられるオープンなプランニング、身体に害の少ない素材の使用、自然の光や通風を取り入れた室内空間、できるだけ機械に頼らないパッシブソーラー工法の採用、段差を少なくしたり手摺り設置による高齢者対応、などへの配慮を特徴としています。 |
| 街に優しいとは |
「街に優しい」要素は、周辺隣戸の前庭配置を踏襲し相隣環境(日当たりや通風の確保)を保証した配置、素材感のある仕上げを用いた街並みの対峙による調和、カーポートやバルコニーの表出による街並みの変化とリズム感、道路に関して開放的で生活観が感じられる住宅、土間やアプローチ脇のベンチ、街に開かれた装置、などへの配慮を特徴としています。 |
| 環境に優しいとは |
「環境に優しい」要素は、雨水の貯留(天水桶による雨水利用)と雨水浸透升の設置、できるだけ電気や機械に頼らない高気密高断熱の室内環境確保、イニシャル・ランニングコストを抑えた省エネ化、高耐久の構法、リサイクル可能な素材や自然素材の使用、などへの配慮を特徴としています。 |
| 手づくりの家とは |
「手づくりの家」という言葉には、かつての民家の知恵に学び、自然な家を職人の腕を活かして共に造っていくという意味を込めています。住宅メーカーの家をはじめ、最近の住宅は機械化・工業化・合理化により「物」としての商品となっています。そうした傾向はある程度必然とは思いますが、住まいは「人」を感じながら生き続けるものです。施主、設計者、施工者・職人がモノをつくるプロセスの中で、また住まうことで、様々な人々が抱く「想う心」の集約だと考えられます。
手づくりの家のキーワードは“Natural”です。できるだけ自然体で自然な住まいとなることです。その意味で、F邸は「人と街と環境に優しい手づくりの家」というコンセプトへの第一歩だと考えています。 |
住まいの話題[125]執筆者
■古口 良一(ふるぐち りょういち)/ アトリエF 一級建築士事務所 |