■住まいの話題[126]:感性重視の家づくり
画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。
カタログスペック

日本のメーカーの自動車って、壊れないし、燃費も良いし、エアコンもよく効きます。欠点を克服して製品を良くする、近代以降の日本人が身につけた勤勉な態度と特長が見事に実を結んだ結果です。けれど、肝心の走りに感動できないとか、心に響く何かが不足している、なんて陰口もよく耳にします。

住宅にも同じような流れが押し寄せつつあるように思います。住宅が、性能や体感的な快適性などの切り口で語られることが増えて、リストにし易い題目や数字で表現されるような明快さが重要視され、結果として、性能の良い“ただの箱”のようなになってきているように思えてなりません。

日本人には、自然現象や季節の移りかわりを感じ取ったり、裏山を神様のように考えたりする伝統的な感受性と精神性があります。それは、とても微妙な感性で、かつてはそれが自然と一体になった空間づくりや生活習慣につながっていました。

現在では生活習慣も、都市化が進み住環境も変わったせいで、かつてのような住宅のあり方やプランが通用するとは思えません。でも、日本人のDNAに刻み込まれた感性に訴えかける新しい空間や新しい住宅のあり方は、もっともっと増えてもよいし、工夫できるような気がします。

いくつか例を挙げながら

目をつぶって、以下に書くようなシーンを想像してみてください。あなたが一日留守番をしなければいけない日。寒くも暑くもない薄暗い休日です。窓の外にはしとしと雨が降っています。あなたは窓を閉め、エアコンを除湿モードにして、ブラインドを下ろして大型テレビの前に陣取りますか。でも、せっかくだったら、その雨を鬱陶しいものとして遮蔽するのではなく、雨音を聞きながらお茶を入れ、本でも読んで、趣がある一日にしてみたいと感じないでしょうか。

階段に腰をかけて本を読んでも、
観葉植物をながめるのもあり。
早く帰った日には、ビールでも片手に夕涼み。

また、最近妙に月日が経つのが早いと感じませんか。それには、一定の環境に保たれたオフィスや家で暮らしているために、季節の移ろいや、ひいては季節毎に日本の生活に存在した様々な行事を失ないかけていることが影響していないでしょうか。家づくりをきっかけに、そういった行事を見直すことは、PS2のある生活の前では時代遅れでしょうか。

さらに、ストレスの多い社会のためにあなたの心持ちや気分も何らかの影響を受けているはずです。それらをやんわりと解放してくれるのが、実は季節の移り変わりを感じたり、日本の持つ多彩な天気のなかに身を置くことのような気がします。それらを積極的に生活の中に採り入れて楽しむというのは、めんどう臭いことでしょうか。

あいまいな空間や仕掛けを持つ家

現代の住宅は普通に設計して建てれば、性能は充分に高いですから、オススメする家づくりは、性能はそこそこにバランスさせて、空間に余裕や仕掛けをたくさん作ることです。そして生活すること自体が遊びだったり癒しにつながる、というのはいかがでしょうか。それも、一つの仕掛けだけでなく、あなたの気分に合わせられるようにいくつか考えておくのです。

仮にあなたの手に入れた土地が小さく条件も厳しいと、一般的には欠点をプラスに変えることが主題の家づくりになりがちです。でもその方法では、結果として一つだけの大きな目玉コンセプトを持った設計になります。一目瞭然の設計は文章でいえば含蓄のない箇条書きレポートのようなもので、あなたの気分に一通りぐらいしか応えてくれない気がします。美しい詩のように、読み直すたびに新たな発見があって、多様なイメージを持つことが出来る、そんな家づくりなら、小さな家でも長く楽しめるのではないでしょうか。

そういう住宅は、効率最優先の設計とくらべて、少しだけ効率的でないし、無駄な空間もゼロではありません。まして住宅はあくまで生活の舞台ですから、そこには抜き差しならない現実もあります。でも、少しの余計な空間や仕掛けが、他では味わえない貴重な時間と空間をあなたの人生に加えてくれるのだったら、それは何にも代えがたいものだと思いませんか。

住まいの話題[126]執筆者
■東森 香織(ひがしもり かおり)/ 東森事務所

旭硝子株式会社
お役立ちリンク  資料請求  お問い合わせ  サイトマップ  ご利用環境  サイトポリシー  品質への取り組み
(C) copyright 2001-2005 旭硝子株式会社 All right reserved.