私の設計したふたつの住宅が同時期に竣工しました。ひとつは白い外観で、もうひとつは黒いものです。設計期間と工事も概ね同時期に進みましたが、ふたつはとても違った住宅となりました。
「白の住宅」は郊外の住宅地に位置し、私と同世代の夫婦のための専用住宅です。建築の仕様としては、内外装とも比較的グレードの高い仕上げ材で構成され、蓄熱式の床暖房や全熱交換換気設備の採用など設備的にも充実しています。(写真左)
「黒の住宅」は都心の10坪余りという狭隘地にあり、施主は私自身であり、自邸と事務所をかねた建築です。仕上げはほとんどなく、床・壁・天井のほとんどが粗いコンクリート素地を露出させており、設備的にも最小限のものを備えるにとどめています。(写真右)
住宅は前提条件や規模などの具体的な要望に加え、施主の個性や嗜好によってその姿を大きく変えますが、それを建築家が意図的にコントロールすべきではありません。むしろ、その振れ幅を実感し許容することが住宅建築の魅力です。だからこそ、「白」と「黒」の違った住宅が生まれたのです。