■住まいの話題[131]:建築的スローライフ
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山には、お宝がいっぱい

アウトドア人間の僕は、よく山野に出掛けます。そこでよく見かけることですが、山の中域から高山帯、沢の上流部まで、よくまあーこんな山奥まで植林をしたものだと感心します。そこで見かけることですが、かなりの山林が放置され、無残な状態になっているように思われます。

先人達が、汗水流して植えてくれた樹木をこのままにして置いていいのでしょうか。日本の資源として再生産の利く山林こそ、僕達建築に関わる人間が、目を向けて、利用していかなくてはいけないように感じます。山には、お宝がいっぱい眠っております。間伐材しかり、風倒木、伐採期を過ぎても放置された森、これら何らかの形で建築材料として利用されるべき木々が、手つかずの状態で眠っております。

地元の工務店の親方からよく聞くことですが「地場産の木材を使うなんてとんでもない、それだけの手間と時間・お金をかけて出来るわけがないよ」と素っ気ないものです。それでも何とかお願いして、仕上げ部分に使わせてもらうことがよくあります。例えば、カウンターテーブルに檜の間伐材をボルト締めして使うとか、杉の大木の切り株部分を掘り起こし板材にして腰壁に使うとか(切り株部分には赤みのある素敵な年輪が表れる。檜だとなお良い)。

この様な取り組みが、建築家としての使命であるような気もします。山は手を入れずそのままにしておけば、ただの森です。人間の都合で原生林に手を入れたら、それを可愛がってやらないと、無残な放蕩息子で終わってしまします。それには、生産者が安定して供給出来るようなネットワークが必要になります。一部の方々が取り組みつつありますが、使う側の理解が足りないような気もします。ただ単に、安価な外材に目を向けるのではなく、少しの工夫で国産材が手に入るのです。インターネットでも検索できます。

信州の山間部では、山林従事者が少しだけ増えていると聞きます。都会からのアイターンの方々です。賛同されるクライアントや施工会社が現れることを期待しています。どうですか「ハンバーガーからおにぎりへ」の気持ちで!

北アルプスと植林された森林地帯
(標高2000m地点まで延びる)
軽井沢へのリユースを待つ古民家
(屋根とサッシュは改装)
そこの解体ちょっと待った(建材のリユース)

僕の仕事はかなりの部分が建て替えです。戸建住宅の改築、邸宅をマンションに、民家の再開発など、何年にも渡って携わってきました。こうした建て替えの場合、既存の建物は解体業者によってユンボ等の解体機械でバリバリと効率よく壊されていきます。そして、発生した廃材はどこかで焼却され灰になる運命です。

そこで僕の出番です。解体前のお宅で打ち合わせをする時によく見ると、これは使える、もったいない、何とかしよう、そんな気になります。既存の部材を活用したい時は、まずその建物を誉めることからはじめます。自分の住んでいた家を誉められていやな気はしません。解体には少しお金が掛かりますが、きっと満足のいく結果が得られます。

30年くらい前の家でも、無垢材が見られます。無垢の小屋梁などは上等です。障子にしても、その本来の機能を使うのではく、インテリア装置として用いると生き返ってきます。照明もすてたものではありません。もっと古い家の場合は、さらに楽しくなります。ヒバの尺角を見つけた時などは最高でした。板引きして、浴室の壁と天井に再利用したくらいです。また大黒柱のある家ですと、その柱を無垢板にして喜ばれたこともあります。

今までで一番の大工事は、江戸中期に建てられた世田谷岡本の古民家を、軽井沢の別荘にリユースしたことです。解体の際に柱・梁・桁などに番号を打って送り出した時は、「頑張れよ、あと百年もその倍も!」の気持ちでした。

再生(リユース)構造材は無理としても、何らかの形で「建材を捨てない」というテーマに取り組みたいものです。戦後は走り過ぎた日本、今こそ、作る側も使う側も“スローライフ”という気持ちを大切にして歩もうではありませんか。

住まいの話題[131]執筆者
■橋爪 史考(はしづめ しこう)/ WAC建築研究室

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