■住まいの話題[141]:スローフード → スローアーキテクチャー
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スローフード

経済成長に伴い大人口の需要を満たすべく、大量生産・大量販売が最良とされてきました。供給者は、質やモラルを犠牲にして、薄利多売の経済原則を追従するあまり、BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザ、バイオ食品、食品表示のねつ造など、様々な問題までも生んでしまったような気がします。

「スローフード」とは、消費者がこの脅威を自身の“無関心”が生んだ産物と気づき、価格よりも“安心”を優先に考え、添加物表示義務・生産者表示を求め、自然食品や安心食材の小生産者保護をうったえる運動です。

こんな現状を新聞・雑誌・Webなどで目にすると、随分と暮しにくい環境になったと思う反面、日本人も成熟した思考を持つ国民になってきたと感じています。

生意気かもしれませんが、実はとっても切実なのです。私はアレルギー性小児喘息であったため、乳児の頃より多くの食事制限を受け、無添加・自然食などにも注意を払って育てられました。また、実体験(発作)を基に禁制品や有害物質も嗅ぎ分けられるようになってしまったり、食品表示や安全性についても無意識に確認してしまいます(お蔭さまで現在は健康そのもの)。最近でこそ、アトピーをはじめアレルギーが認知されるようになりましたが、給食時代の弁当持参では担任からも“不調和”の目で視られ辛いものでした。

ビニールハウス!?

昨今首都圏では、凄い勢いで高層マンションや建売住宅が販売されています。友人から「○○販売で、□□駅のマンション3,000万円台だけど、どう思う?」や「条件付木造住宅の建売だけど・・・」と相談を受けたりしますが、本音をどこまで話して良いのやら・・・。だって、ほとんどが「ビニールハウス」。

ほぼスケルトンの集合住宅
珪藻土と自然素材によるリフォーム住宅

設計した建物を内覧会で紹介すると、「これ本物の建具枠に木の扉ですね」「左官の壁か」「無垢のフローリングだ」などと関心が注がれます。スプルスやラワンの枠、シナ材の練付合板、節ありの無垢パイン材と低予算での苦肉の策なのに・・・トホホ。

最近のマンションや建売住宅のほとんどは「新建材」製で、建具・枠・柱まで木目調塩化ビニールで出来ているのです。「やっぱり住宅は木造だよね」と話しをうかがい、お宅を拝見させていただくと石膏ボードの上にビニールクロス、ビニール巾木、フローリングもウレタン仕上げ。木の香りは・・・。あっ、クシャミが出る!

スローアーキテクチャー

住宅設計においては「高級でメンテナンスフリー」の仕上げでと要望を受けたりしますが、返答に困ってしまいます。なぜなら「高価=メンテナンスフリー」はありますが、「高級=手間が掛かる」のが常です。例えば、木製扉は狂いますが修正も可能で、手を加えれば新品同様に再生もできます。

私は古い家の傷などを見て、傷中まで同じ材料だったりすると(無垢材と判断できるためか)、妙に安心したりします。それは、建材が耐えてきた年数の証であったり、手を加えれば復活できる力を持った素材だからなのです。

どんなにスローに生きても、子供は離れ、両親の介護が始まり、自分が介護される立場へと・・・時と共に生活スタイルは変化していきます。35年の期間(ローン)を快適に暮らすにはリフォームも必要となるでしょう。構造は堅牢に、内装は柔軟に対応できなければなりません。

「スローフード」と同様に、建材においても“安心”を軸に、匂い・感触・風合・温度などを吟味しながら、自分だけの空間を創造してみてはいかがでしょうか。建物の“経年変化”までも楽しめるような「スローアーキテクチャー」として、生活スタイルの手助けができれば幸いです。

住まいの話題[141]執筆者
■石崎 友久(いしざき ともひさ)/ 有限会社アーキウィル石崎建築設計

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