■住まいの話題[145]:施主は恋人
画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。
施主という恋人

建築家である自分にとって「施主」は恋人のような対象です。設計依頼という恋文を突然もらい、何年かのお付き合いを重ねた上で「家」という子供が生まれるのです。むろん恋人同士ですから、お互い合わなくて別れてしまうこともあれば、調子にのって何軒も子供を産み続ける幸せな結果もあります。

また、おつき合いの半ばで大げんかをしたり、仲直りをしたり、一緒にお酒を飲んで理想を語り合うこともあります。ソコのところは、ハウスメーカーや注文住宅屋さんとはちょっと違うところでしょうか。後者は、いわば「ホスト」さん。ハイハイわがままを聞いてくれる楽なおつき合いです。

恋人とつきあうのはとても楽しいことですが、いろいろ気を使うし、それぞれタイプが違うので、つき合い方はその都度さまざまです。ホストさんとマニュアル通りに遊ぶ方が、気が楽かもしれません。しかし、最後の幸せの度合いは、恋人とああじゃないこおじゃないとやった人生の方が良いと思います(もちろん、そうでない人もたくさんいるでしょうけど)。

その結果、できあがる「家」も両者の考えがぎっしりつまった、他にはない、新しく、楽しい物が生まれるのだと思います。

母親役

建築にとって、母親はなんといっても「施主」です。生まれたばかりの「家」を何十年も育てていくのです。

建築家はというと、浮気性の父親です。子供が生まれてしまうと、また別の恋人をさがしに出ていってしまいます。そうやって、町中を自分の子供たちで一杯にする野望を持っているのです。母親の方はというと、壁にペンキを塗ったり、樋の掃除をしたり、色々世話を焼くことになります。

独立後の最初の“子供”
“恋人”のY夫妻

父親も1年目の誕生日には顔を出すのですが、普段は顔を出さず、まれに様子を見に行くと、化粧直しをしていたり増築していたりと、その成長ぶりにおどろくことになったり・・・・。

母親としては「世話のかからない家が良いわぁ」というのですが、こんな話があります。ある愛犬家の言葉ですが「その犬が元気でいるときは当然のこととして、病気になったり年老いて具合が悪くなるからこそ、病院に連れて行ったり世話をよくしてやったりすることで、愛情が深くなる」のだそうです。つまり、世話を焼けば焼くほど、愛着が湧くということです。

メンテナンスフリーのタイル柄のパネルが貼ってあるような、手間のかからない我が子もいいけれど、年を重ねるごとに色濃く落ち着いてゆく外壁材や床材をまとった家に、オイルステインを塗りながら育てていくのはとても楽しいことではないかと、父親は思うのですが・・・・。

施工者

両者の考えをもりこんだ設計図ができあがったら、良い産院をさがして産まなくてはなりません。すなわち、工務店さがしです。できればこれから先ずっと世話を見てもらえる、かかりつけのお医者さんとなってくれるところが安心です。大病院もいいし、地元の小さな顔なじみ的診療所でもよし。

そして現在も

そして今日も私は、個性豊かな恋人たちに引っ張り回されながら、楽しく「家」づくりに励む毎日を送っています。もちろん、新しい恋人も常に募集中。われはと思う方、ぜひ「ラブレター」をください。

住まいの話題[145]執筆者
■石川 淳(いしかわ じゅん)/ 石川淳建築設計事務所

旭硝子株式会社
お役立ちリンク  資料請求  お問い合わせ  サイトマップ  ご利用環境  サイトポリシー  品質への取り組み
(C) copyright 2001-2005 旭硝子株式会社 All right reserved.