建築家である自分にとって「施主」は恋人のような対象です。設計依頼という恋文を突然もらい、何年かのお付き合いを重ねた上で「家」という子供が生まれるのです。むろん恋人同士ですから、お互い合わなくて別れてしまうこともあれば、調子にのって何軒も子供を産み続ける幸せな結果もあります。
また、おつき合いの半ばで大げんかをしたり、仲直りをしたり、一緒にお酒を飲んで理想を語り合うこともあります。ソコのところは、ハウスメーカーや注文住宅屋さんとはちょっと違うところでしょうか。後者は、いわば「ホスト」さん。ハイハイわがままを聞いてくれる楽なおつき合いです。
恋人とつきあうのはとても楽しいことですが、いろいろ気を使うし、それぞれタイプが違うので、つき合い方はその都度さまざまです。ホストさんとマニュアル通りに遊ぶ方が、気が楽かもしれません。しかし、最後の幸せの度合いは、恋人とああじゃないこおじゃないとやった人生の方が良いと思います(もちろん、そうでない人もたくさんいるでしょうけど)。
その結果、できあがる「家」も両者の考えがぎっしりつまった、他にはない、新しく、楽しい物が生まれるのだと思います。