■住まいの話題[149]:空間を創る
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作品と文章

建築家の作品と文章の関係についてはあまり触れられる事がありませんが、両者を天秤に載せてみると、バランスの良い方、悪い方が様々で結構面白いモノです。建築家の性格や設計事務所の特徴を理解するには、作品だけではなく、文章にも目を通すと良いと思います。

ある建築家が「文章には非常に気を遣う」と言っていましたが、その理由が良く分からなかったので自分なりに悩み、一つの解として、文章の方が相手に対し直接的だからかと思いました。建築が現実だと仮定すると、文章を読む時、人はその文章から想像する空想の世界を創り自らを存在させてしまいます。空想の世界を創るのは当然本人ですが、その空想を抱かせる時間と場を提供するのは文章です。当然ながら、その世界は読者の感情によって変容し、更には、文章を提供した側の感情によっても左右されることでしょう。

作品なのか文章なのか、その媒体はどうであれ、メッセージを送られた時に展開される空想の場は、人類にとって貴重な経験であると思います。建築はそこに存在することからその意味が分かる場合もありますが、文章に関しては最初に読んだ印象がどうしても強くなり、真意を伝えるのにそれが障害となる可能性があります。

文章的建築

上述した事が一つの答えであるならば、文章と建築は相対するものであるかもしれません。住宅に関しては、建築の中でも最も文章に近いのかもしれません。施主との関係が直接的過ぎるので、住宅の設計は文章のような難しさがあります。

「衣服の拡張の一つ」としての外観例
時間軸を考慮した空間

感情的になる自分を抑えなければなりませんし、施主の胸の内を嫌がられないように探らねばなりません。こういう家に住めと押し通す事はできませんし、言葉巧みに説得したからといって、それが自分の自慰行為であったのであれば、施主の感情は次第に不信感へと変わるでしょう。

同じような事が設計者だけではなく、施工者にも言えてしまうのが住宅の文章的難しさです。住宅の施主の多くは、設計者だけではなく、一生そこに住む建築を工事する者との付き合いも重要視します。それが良い方向に進んだ時、良い住宅建築が生まれると思います。

空間の創出

設計を始める時、施主と「空間を創る」ということに関し話し合いをします。最初は何のことか分からない顔をしていますが、多少のアイデアを提示すると面白いくらいに話が進みます。

例えば、旧家を建て直す場合であれば、それが担った3次元の座標軸と時間軸の役割についてまず話を始めます。旧家に感謝をしている場合が多く、この話をした後に解体に立ち会って頂くと皆さん涙を流します。その想いよりも建て替えたいという感情が勝るから新築をするというスタンスを理解していただき、新しい空間はノスタルジー的にしたいのか、それともファッション的としたいのかなど様々な協議をします。

時間軸を考慮した空間を創るには未来だけではなく、過去の空間も必要です。全く同じ環境で経験を重ねた人間はいません。よって個人の経験が個人を育んできた訳ですから、過去の空間を協議する事は未来の空間よりも重要となります。

空間を創るという事は、そこに住む人の過去も含めた一生を創らなければなりません。住宅は衣服の拡張とも言えますが、衣服ほど瞬間的ではありません。また、住宅の空間には母胎の中のような安堵感も必要ですが、母胎空間とは違い他者の介在が考えられるため、空間そのものを完全に独占することは不可能です。単に住む人の色に染める事ではなく、4次元空間を継続させなければなりません。空間がそれぞれのベクトルに合致しているのかを判断し、そのベクトルに合わせて空間を創出させられればと思います。

住まいの話題[149]執筆者
■田中 俊行(たなか としゆき)/ (株)田中俊行建築空間設計事務所

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