設計を始める時、施主と「空間を創る」ということに関し話し合いをします。最初は何のことか分からない顔をしていますが、多少のアイデアを提示すると面白いくらいに話が進みます。
例えば、旧家を建て直す場合であれば、それが担った3次元の座標軸と時間軸の役割についてまず話を始めます。旧家に感謝をしている場合が多く、この話をした後に解体に立ち会って頂くと皆さん涙を流します。その想いよりも建て替えたいという感情が勝るから新築をするというスタンスを理解していただき、新しい空間はノスタルジー的にしたいのか、それともファッション的としたいのかなど様々な協議をします。
時間軸を考慮した空間を創るには未来だけではなく、過去の空間も必要です。全く同じ環境で経験を重ねた人間はいません。よって個人の経験が個人を育んできた訳ですから、過去の空間を協議する事は未来の空間よりも重要となります。
空間を創るという事は、そこに住む人の過去も含めた一生を創らなければなりません。住宅は衣服の拡張とも言えますが、衣服ほど瞬間的ではありません。また、住宅の空間には母胎の中のような安堵感も必要ですが、母胎空間とは違い他者の介在が考えられるため、空間そのものを完全に独占することは不可能です。単に住む人の色に染める事ではなく、4次元空間を継続させなければなりません。空間がそれぞれのベクトルに合致しているのかを判断し、そのベクトルに合わせて空間を創出させられればと思います。