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建築家と住宅を創る。建主にとってそれは、モデルハウスをまわって商品として住宅を買うのとは大きく異なります。住宅を創るのは一生におそらく1度です。だからこそ夢やこだわりを大切にしたい、そんな想いを現実に変えていく、それが建築家と創る住宅です。
自分のためだけのこの世に1つしかない住宅を、1つ1つ納得しながら時間をかけ、建築家と共同で創りあげていく。だから商品住宅と違い、完成するまでに時間もかかりますし、かなりのエネルギーを注がなくてはなりません。 |
| 現実と理想のギャップ |
一方、建築家にとって、住宅はビルやマンションの設計と比べ、建主との関わり方という点でスタンスがかなり異なります。建主の夢やこだわりを、限られた予算や敷地条件を満たしながら、自分にしかできない空間として創りださなくてはなりません。
しかし、実際に検討をはじめるとこれが難しい。建主の理想と、予算や法規などの条件とのギャップが露になることも多々あります。最初に条件を聞いただけで、「これは厳しい!」と内心思ってしまう相談を受けることもよくあります。
写真は昨年竣工した住宅ですが、厳しい仕事でした。最初に条件をうかがった時には、予算1500万。RC造。囲われた旗竿の敷地に建蔽率は40%。5人家族で3人の子供にそれぞれ6帖程度の子供部屋。トイレは2カ所・・・等々。構造、予算、ヴォリューム、矛盾だらけです。 |
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| 2階のデッキとLDK |
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| 1階の中庭と個室 |
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| できる? できない? |
しかし、そんな時でも私は簡単に「できない」ということを口にしません。そう言うことは、簡単に自身の創造性を否定することに他なりません。この予算では、RC造は無理で木造しかできません、と言ってしまえば簡単です。でもRC造は建主の強い夢で、私も諦めたくはありません。何度も話をうかがい、条件に優先順位をつけた案をいくつも作成し、「こうすれば、できる」とプレゼンを続けました。そうすることで、次第に要望の微妙なニュアンス、匙加減は掴めてきます。
そして最後に提案したときは、気に入ってもらう確信があったので、現地に模型を持ち込んでプレゼンを行いました。その時提案したのが、「階段と廊下は外にしましょう、そうすればほとんどの要望を満たしつつ、さらに明るく広がりのある空間が可能です」ということです。家族が互いの部屋を行き来するのは、一度外に出てから。雨が降れば傘をさします。普通ならなかなか許容してもらえない案です。しかし予想通り、結果は即OKでした。
肝となる部分だけを説明すると、実は階段とブリッジはエキスパンドメタルでできていますので、建蔽率に含まれません。もしこれを内部にすれば、居室はかなり圧迫されます。非居室的な要素を徹底的に外に出す事で、わずか70m2の延床面積に、最大限の居室と、広がりのある明るい中庭が両立しています。
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| それぞれのクリエイティビティー |
困難な状況に「できない」というネガティブな姿勢で望むのと、「できる」というポジティブな姿勢で望むのとでは大きく異なります。結果的には何かを諦めなければならないかもしれません。しかし、不可能と思えるような状況の中で可能性を見つけだすことにこそ、建築家のクリエイティビティーが問われるのです。
そして、その可能性を受け入れることができるかどうかに、今度は建主のクリエイティビティーも問われます。そんな刺激がたまらなくて、私は住宅の設計を行っています。 |
住まいの話題[151]執筆者
■佐藤 宏尚(さとう ひろたか)/ (有)佐藤宏尚建築デザイン事務所 |