■住まいの話題[152]:「真面目」な話
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美容院のように

美容師に「こんなかんじにしたい」と伝えるのは案外難しいものです。漠然としたイメージはあっても、なかなかぴったりした言葉は見つからないし、写真を見せたり、かなり具体的に説明しても、全く通じない(できない? する気がない?)こともしばしばです。

ところが、「どんなかんじ」かをすぐに了解したうえ、アナタの髪質だとこういうふうでは? なんて、ワタシが思いもよらない提案を受けたりすることもある。そうしてできあがったワタシが、自分でも知らなかったワタシだったりすると、もうウキウキ。そういう美容師に巡り会うまで、皆さんは美容院行脚に邁進しますよね。

家を建てるときも同じです。アナタののぞみを遠慮なく披露できる人で、かつ、この人ハナシが通じるな、と思える建築家、敷地条件や予算の制約で、写真通りにはいかなくても、その写真の「どんなかんじ」がアナタを捕らえているのか、アナタの言葉にならないコトバが、「どんなかんじ」を求めているのかをキャッチできる建築家を探してください。建築家の敷居は存外低いのですから。

不真面目で行こう!

建築も含め、すべてデザインというものは、人に、ちょっとにこっとしてもらうために存在すると私は思っています。これは愉快!とか、こんなのアリ?とか、口元のほころび方はいろいろでも・・・・。

スマイル!

ところが、日本人は良くも悪くもとにかく真面目。そして、その生真面目さは、常に、何事にも、唯一の「正しさ」を追求させてしまいます。だから、日本人のデザインも大真面目で、ほんとうに「よくできて」いる、減点のない、便利な、清潔なデザイン。しかし、そういう「グットデザイン」を眺めていると、かくかくしかじか、こういうわけでワタシはこういう「正しい」姿になりました(ホントはちがう姿がよかったんだけど?)というエクスキューズが、時にはおしつけがましい程聞こえてきます。

これではちっとも楽しくない。とても元気をチャージするなんてことはできないとゲンナリしてしまいます。多少の不便はぶっちぎっても、「ワタシはこうしたいのッ」という意志と欲望で満ち満ちているイタリア人とは対極的です。

シャツ一枚でさえ「今、買うべきアイテムはコレ!」。シャツくらい好きなものを着ちゃいかんのか? とツッコミいれたくなりませんか? ましてや家をつくるのに、家族の在り方に、「正解」など存在するわけがありません。

施主と建築家のコラボレーション

ひとりひとりの施主との対話の中で、この人はこんなことを考えているのか! 私の提案に対してそんなふうにイメージを拡げるのか!! という強烈な驚きが必ず現われ、ほんとうに毎回、「普通の」人や「在るべき」家族など、幻想(しかもちょっと脅迫めいた)にすぎないのだなと痛感します。

建売住宅があんなに「よくできて」いるのに、生気のない、なにかがちがう、コレガアナタノシアワセナノヨといいくるめられているような気がするのは、「平均」という幻想をモデルにしているからに他ならないからだとしみじみわかります。

この対話、施主と建築家のファンタジーの重ね合わせの繰り返しが、住宅を、時には家族の姿まで、スタート時点でのだれの思惑をも超えて、ユニークに、ダイナミックに変身させていく。これには、毎度毎度、私自身が新しくなっていく歓びがあります。施主の皆さんにも、願わくば、この醍醐味を堪能してほしいと思うのです。

住まいの話題[152]執筆者
■橋爪 潤子(はしづめ じゅんこ)/ スタジオボンジョルノ一級建築士事務所

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