■住まいの話題[157]:建築とは何? 住宅とは何? 設計とは何?
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建築とは

イタリアのヴェネツィアを歩くとそこはまるで迷路である。いく重にも曲がりくねる細い路地を行くと、急に目の前が広がりいつの間にか小さな広場に出てしまうことがある。そこにはエネルギッシュな太陽の光が溢れ、シエナイエローとヴェネツィアンレッドの混合したスタッコの淡く神秘なそして陽気な色調の建物の壁面が広がり、今までの迷路を彷徨っていた不安感が明るい光に満たされた安堵感へと変わっていく。それはまるで、迷子がやっと母を見つけ、胸に飛び込んでいく安らぎと似ている。

ヴェネツィアの人々にとって広場とは、密集する建築群の中に空いた明るく光に満ちたいやしの場である。その使われ方は、語らいの場であったり、祭りの場であったり、遊びの場であったり多種多様である。そこに静かに佇むといつの間にか時間は過ぎ、ファサードを色彩豊かに生き生きと映し出していた輝く太陽が、いつの間にか街の全てのモノ(建築)を赤く染め出す。そして今日一日のエネルギーをすべて焼き尽くすがごとく、一瞬、夕日が赤煉瓦色の瓦を真赤に燃やし、街は夜の帳の中へ落ちていく。

建築とは、ヴェネツィアの街のように脈々と続く歴史や時の流れの中にあって、太陽・星・季節、そして時間や光や風のリズムの変化に刻々と表情を変え、見る者に暮らす者に、感動と驚きと魅惑と安らぎを与えるものである。しかし悲しいことではあるが、日本では時代の流れの中で美しい古い建築が壊され、次々と新しい金属パネルやガラスの建築へとその姿を変えている。

住宅設計例(1)
ステンドグラス付きムク木製玄関扉
住宅設計例(2)
大理石・ボーダータイル貼のリビング暖炉
住宅とは

住宅とは、建築群を縮小した一つの単位である。ただ一般的な建築との大きな相違点は、そこで人が生活するということである。住宅は、その中で生活する人のライフスタイルを個性的に演出し、その人の感性に刺激を与えるものであり、そして今までの経験の中では体験することができなかった、感動・驚き・魅惑・安らぎを得ることができる心ときめく空間である。また、そこで生活し続ける限り生じるであろう生活の変化に応じ、住宅はまるで生き物のように変化・成長していくものである。

一人一人の個性・人生観・ライフスタイルが異なるように、住宅も一つとして同じ住宅など存在しない。しかも、住宅に住む人達は人間生活においての最小集団である家族という単位を形成する。よって、家族が住宅という空間において自然環境や近隣関係とどのように関わり生活していくかも大切なこととなる。故に住宅が家族生活に及ぼす影響は大きく、それゆえに、生活を豊かにし、魅力あるものにしてくれる。

設計とは

設計とは、人間の生活あるいは家族の生活が、多種多様な環境とどのように関わり合うか、そして将来においてどのように変化していくかを計画・予測することである。住宅は都市あるいは街をつくる最小の単位である。

私は建築の設計を始める時、必ず、以前私が旅をしたイタリアの街の風景や光や風をその敷地に重ねる。そしてその敷地の自然的条件や物理的条件を読み取り、その中に家族の個性や人生観やライフスタイルや要求を立体的な空間に落し込み構成していく。さらに、その家族が抱く夢や希望を住宅という立体の中に写し具象化していく。

生物が生存するための環境条件、すなわち、地・水・火・風はまさしく住宅が関わっていく自然環境である。その自然環境の中に溶け込み一体化することが、その造形美とつながる。同時にそれは、居住性・心地良さの追及でもある。その飽く無き追求が設計である。

住まいの話題[157]執筆者
■中村 昇一(なかむら しょういち)/ イル・マーレ設計工房株式会社

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