■住まいの話題[168]:曳家に学ぶ
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リフォームは語る

昨年(2003年)夏、中古マンションの自宅購入と同時に全面リフォームをした。躯体に手を入れず、設備と内装を全面改装する「スケルトンリフォーム」だ。いつものように実施設計を終え、工事が始まる。まずは、解体工事から。自宅ということもあり、参加できる工事は積極的に手伝った。

解体工事もその一つで、工事を手伝いながらふと感じたことがある。自分はモノ(建物)を創り出す仕事(設計)をしているが、まだ使える材料をこんなふうに解体し廃棄していいのだろうかと・・・。なんだか、ヘンな気持ちになった。そんな折り、リフォームと関連する貴重な体験の機会を得た。ここではその一端を紹介したい。

動く建物

私の妻の実家は、三代続く「曳家(ひきや)」である。曳家とは、文字通り、建物を移動させる職業だ。恥ずかしながら、私は曳家というものをほんの数年前まで知らなかった。建築を学んできたにもかかわらず・・・。曳家の工法はさまざまで、最近の例としては、約50メートル移動させた旧首相官邸などがある。

曳家については、妻の実家へ帰省するたびにいろいろと教えてもらっていたが、聞くとやるのとでは大違いらしい。そこで、曳家工事を手伝わせてもらうことになった。曳くのは、戦前に建てられた倉庫(9間×4間:2階建)で、移築後に多少の化粧直しをする簡単な工事である。

手伝ったはいいが、そもそも、道具の名前すら分からない。「そこにある"コノキリ"取って」と言われても、「こ?の?き?り?」である。今まで聞いたこともない"木腰(キゴシ)""金腰(カナコシ)""コロ""道金(ミチガネ)""カメ""ヤ""ドンゴロ"などの道具名が次々と飛び出す。それらの一つ一つを、義父で三代目の親方や四代目の義兄や義弟からその都度、教えてもらいながら作業を進めた。2〜3日経つと、作業の段取りもすこしずつ分かり、とにかく、家を持ち上げ動かしていることに感動さえ覚えた。

建物を曳いている様子
曳く建物の下部
究極のリフォーム

曳家の工事中、近所にお住まいの奥様が興味ありそうに工事の様子を見にきてこう言った。「うちの母屋(おもや)が古く、使い勝手も悪いので、建替えを考えているんですが、こんなふうに家を移動させて、リフォームすることもできるのですか?」。曳家の親方は「もちろん、新築するよりずっと安くできますよ!」と答える。

リフォームについては せっかく先祖代々受継いできた母屋を簡単に壊してしまうより、残せる部分は残し、補強しなくてはいけない部分は補強して改修することが、その方にとって一番良い方法の場合もある。もしかして、既存の建物を移動し、必要な箇所のみを改修することは、究極のリフォームと言えるのかもしれない。

省資源を目指す

近年の「リフォームブーム?」で、戸建てやマンションを問わず、住宅の改修工事が多くなっている。ともすれば、単なる機能性の向上や、デザイン重視のリフォームだけにとどまっている工事も多く見受けられる。でも今回の曳家の経験で、内外装や設備だけでなく、基礎や土台など長年風雪に耐えてきた住宅の構造部分もあわせて取替え工事をすることが、比較的容易にできることを知った。また、補修の仕方しだいで建物は生き続けることができることも確信した。

私はこれまで通り、建築の設計を続けることになるが、自宅のリフォームと曳家工事の手伝いを通して学んだ「新しい知識」と「限られた資源を有効活用することの大切さ」を、今後の住宅設計にも活かしたいと考えている。

住まいの話題[168]執筆者
■岡平 將宏(おかひら まさひろ)/ オカヒラ建築設計ジムショ

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