■住まいの話題[175]:住宅の開放性
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開放性=関係性

住宅にとって「開放性」(都市・社会・周辺環境との関り方、自然や人との関り方)は重要なテーマのひとつです。「開放性」というと視覚的なイメージが先行する感がありますが、「関係性」と捉え直せば、住宅の相当部分を占める根源的問題と言えるでしょう。

都市・社会環境や他者との間合い(社会性と私性)をどうはかり、周辺環境との関係をどう整理し、室内外の空間をいかに繋ぎ相互貫流させるのか、否か。

敷地やクライアントの持つ固有性を前提に、建築家がどんなスタンスでそれらを読み取り、変化を予測するかによって、その住宅への回答は全く違ったものになってきます(クライアントの固有性の中には、開放性の程度に対する生理的な感覚やプライバシー感覚などは重要な要素になります)。そしてそれは、多く普遍性を内包しつつも世界唯一の特殊解として存在する事になるのです。この点は単品生産である建築の言い尽くしがたい魅力・醍醐味です。

中間領域

住宅の中に曖昧な領域を効果的に設ける事で、膨らみや広がり・豊かさをもたらす事が可能です。空間の言葉で言うと中間領域という言い方が一般的かもしれません。

例えば建築の外との間に、屋外とも屋内とも言えない様な空間、あるいはプライベートな空間とも公共の空間とも言えない空間を設ける事で、そういった中間領域がフィルターの役目を果たし、外部の公的な空間から内部の私的な空間までを緩やかに開放感を保ったまま繋いでくれる事になります。最初に述べた「緩やかな関係性」の構築です。

上池台のM邸:
ベッドルームに繋がる階段状パティオ
あざみ野のF邸:
リビングルーム

それはデッキやパティオあるいは樹木一本やほんの少し方向を変えるアプローチといったちょっとした要素でも、意識的に扱われるとこういった効果を持たせる事が可能です。

屋内空間でも同じ様な事が言えます。リビングダイニングの中で、ダイニングテーブルが置かれている所でもソファーが置かれているところでもない、また単に通り抜けの空間でもない、どちらの空間と言ってもいいが機能的にはどちらにも所属していない。こんな領域が存在せずに、きちっと割り切れた空間だけで構成された場合、息苦しく狭苦しい印象になってしまうでしょう。

境界の曖昧性

空間や物の存在あるいは意味や概念が変質するとき、ある瞬間・場を境に一瞬にして切り替わるか、少しずつ連続的に変質するか、大局的にはこのふたつの場合に大別できると思います。前者の場合その変化は実にドラマティックで衝撃的ですが、私は後者のどちらともつかない曖昧な存在時期に独特の「美」を感じています。

先に述べた「中間領域」はこの考え方の延長にあります。虚々実々としていて一瞬にして正反対の意味にもなりうるはかなさ・深さ。更に幾つかの要素や意味が絡み合ったときの繊細なニュアンス。わかりやすい事例を挙げると、絵画の世界ではエッシャーの版画やマグリットの絵に端的に見られますし、両性具有もその典型の美と言えるのではないでしょうか。生き物の世界だと、蝶やセミ等の脱皮やカゲロウの羽化の過程がそれに当たるでしょう。

「障子」は最もわかりやすい例かもしれません。障子は透ける事・動く事で屋内外を曖昧に仕切っていますが、光を取り入れ、光を感じさせるものが、逆に「影」の存在を強調し、影そのものに美しさを見いださせてくれます。

またその影をおぼろげに溶かす時、「光」の鋭さ・強さを意識するといった「曖昧さの美」は、「陰の美」あるいは「逆光の美」とも言い表せます。「明快さの美」=「陽の美」=「順光の美」の西欧的「美」に対して、日本的な「美」と言えるのではないでしょうか。

住まいの話題[175]執筆者
■小林 真人(こばやし まひと)/ 有限会社 小林真人建築アトリエ

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