■住まいの話題[182]:家は成長する:「佃島の家」の場合
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我々が設計監理した「佃島の家」が2003年の12月に竣工した。家族は、ご夫婦と小学生の男の子と生まれたばかりの赤ちゃん。ここでは、設計に際してどのようなことを考えたか、具体的に書き連ねてみようと思う。

敷地周辺
「江戸情緒を今に残す風情あふれる町並み」と言いたい所だが、あちらでは3階建てハウジングメーカー風に、こちらでは何軒かまとめてマンションに、という風に虫食い的に建て替えが進んでいる。でも、絶滅してしまったワケではなく、盆栽や朝顔の鉢植えが軒先に並べられていたり、イスを持ち出して夕涼みをしながら茶飲み話をしているおばさん達がいたりで、細い路地はまだまだ健在である。歩きながら、中を覗き込んだりしなくても、開け放たれた玄関引き戸にかけられた暖簾の向こう側から生活の気配がジワジワと染み出してきている。子供の笑い声だとか、晩ご飯の支度をしている音とか匂いだとか、ナイター中継の音だとか・・・・。

このような地域に、今回の敷地はある。そして、ひとつ特筆しておかなければならないのが、道路を挟んだ向こう側に隅田川の堤防が走っているということ。3階まで上がれば、隅田川の川面とその対岸が見えるし、何よりも、絶対に邪魔されずに、大空を独り占めできる。
建物の構成は単純に
敷地の長手方向に沿って2枚の壁を建て、その間に3枚の床、そして屋根を差し込み、そこに1階から屋上までを串刺しに貫く1本のオブジェ然とした階段を置く。この階段にまとわりつくように必要諸室が並ぶ。1階には、車を趣味とするご主人のためのガレージと客間。2階には、寝室と水回り関係。そして、3階に日常生活の主要なスペースとなる居間とダイニング・キッチン。
外観:カーテンウォールのガラス面を見る
内観:キッチンから階段越しに隅田川を見る
緩やかにつながるワンルーム状のLDK

隅田川側に近い部分が居間。天井高をグゥーンと引き伸ばし、高さ4.5メートルの全面ガラス張りとして、隅田川の風景を1枚の絵画のように扱い、生活空間に取り込む。逆に、道路側から見れば、住人の生活の雰囲気が外に漏れ出る。これも「佃島スタイル」の1種と言えるのではないか。

現場用の足場板で作った階段を挟んで、その奧がダイニング・キッチン。LとDKの間に階段があることで、ひと続きの空間でありながらも、別々の場所になっている。Lでは本を読んでいる人がいて、Kでは料理を作っている人がいる。家族がそれぞれ自分のことをしているのだけれども、やはり「一緒にいる」という感じ。キッチンの裏にある必要最小限の部分が、ロフトを備えた子供エリア。ここもLDKに対してフル・オープンでなく、完全にシャット・アウトするでもなく、壁のカゲにちょっと隠れる程度。お互いの気配が感じられる微妙な関係を、ここでも作ろうと考えた。

屋上テラス2種

リビングから階段を上がった所にあるのがテラス1。四周に目線より少し高い壁を巡らせて完全なプライベート・ガーデンとしている。空を天井とする第2の居間と言ってもイイかもしれない。バーベキューをしたり、ガーデニングをしたり、洗濯物を干したり、地面に庭が取れない分、屋上は有効利用したい。また、子供エリア上のロフトにも直結しているので、子供達の遊び場でもある。

テラス1からハシゴを更に登るともうひとつのテラスにたどり着く。レベル的に地上10メートル。四方を細い手すりだけで囲われていてパノラミックなビューが楽しめる場所。隅田川はもちろんのこと、佃島の町並み越しに高層ビルも眺められる。

小学生の男の子は、友達を連れてきては、家中を走り回っているとのこと。そして、赤ちゃんはハイハイを始めたらしい。で、階段の隙間から落ちないように落下防止策を考えてほしいとの連絡があった。その打合せで、久しぶりに佃島へ赴く。家族と共に、家が少しずつ成長するのを見守るのは、嬉しいし、楽しい!
住まいの話題[182]執筆者
■平賀 竜之助(ひらが りゅうのすけ)/ 平賀竜之助建築研究所

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