■住まいの話題[185]:これからの住まいを考える
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住宅費のかからない家にしたい

今、25年前に設計し建築した住宅の建替え計画を検討している。当時は経済が上向きの成長の時代で、住まいもそれを反映してかなり贅沢な空間づくりをした。還暦を迎えた施主は、年金を受け取ってみて、夫人の受給額を改めて知ることになった。もし夫人だけ残ったらこのままでは生活が出来ないと、生活の縮小をする事を視野に入れて検討した結果、住宅のランニングコスト・維持費軽減を計らねばとなったということである。

住宅の面積と住居費(ランニングコスト・メンテナンス費用)は正比例するので、面積を縮小することは、確かに支出を抑えるのに大きな効果が期待できる。太陽光発電装置をつけ、塗り替えの必要ない仕上げ材にし、風通しの良い家にするための打ち合わせが続いている。

積み重ねた経験がどう生かされるか
25年前に建てた家での、身をもって知った不具合が、改善要求として次々と明らかにされる。スキップフロアーはバリアフリーに、廊下はまっすぐに通す、浴室は南側に、キッチンは1列型に、屋根は谷をなくし、平面は入り隅のない型、つまり四角形で・・・・と続く。

その結果、施主本人がまとめた改築案の平面は凹凸のない矩形、屋根は切妻、部屋の配置は豆腐を切ったように素っ気ない物になってしまった。これを「なんとかエエカッコにして」と言う依頼である。現在の住宅は延べ面積75坪ほどであるが、それを少し小さくして45坪くらいにしたいという。

そこで私と意見がくいちがう。住宅のランニングコストや維持費を削減するには、もっと小さくしなければ効果が見えにくいと説明したのだが、このくらいが限界だというのである。現在の住まいを減築し、改修する方が経済的に負担が少ないから、持ち物の整理をして、25坪くらいで暮らす工夫をすることを勧める私の提案に、答えはまだ返ってこない。
建替え計画中の家:外観
建替え計画中の家:枯山水の庭
道路にはぎ取られてしまう快適な生活
この計画の発端は、接道している道路の拡幅計画で、敷地の半分近くが買収されることにあった。長年、生活に潤いを与えてくれた庭のほとんどがなくなってしまうのである。南面傾斜の敷地のこの家の庭は、20余年で育った庭木と石組みで作った枯山水の庭で、背景は180度に広がる天空である。リビングで対座すると本当に心が休まり、洗われる思いがする。残された家と僅かに残される庭では得ることの出来ない空間なのだ。

しかし家はけずらないのだから良いではないかというのが行政の言い分である。建替えに際しては、道路側の敷地境界から5メートル下げて建物を建て、道行く人にも庭を楽しんでもらいたいと言う希望も持っているのだから、建て主の街に対する思いとはうらはらである。
建物だけが住まいか

都市での住宅の建て方を見ていると、敷地一杯に建物を建て過ぎていると思う。現在、我が家の2〜3軒先に新築中の住宅も、車が接触しそうなまでに道路境界ぎりぎりに接して建てられている。そんなに建ぺい率一杯まで建てなくても良いだろうと思うのだが!

屋根のある建物だけが住まいではあるまい。緑陰や木漏れ日のある外部空間は、本当に生活に潤いを与えてくれる。雨が当たっても、外部空間も住まいなのだ。ましてこの外部空間は街の景観をつくっている。みんなが住みたいと思っている美しい街は、一軒一軒の住まいの有り様にかかっているのだという事をもっとしっかり認識してもらうことは出来ないだろうか。

良い街に住むことに憧れながら、その景観形成に自分は関係ないと思っているらしい多くの建て主に、外部空間も住まい、間取りは敷地全体を間取ることからはじめようと、住まいに対する考え方の転換を強くお願いしたい。

住まいの話題[185]執筆者
■松枝 雅子(まつえだ まさこ)/ 株式会社 松枝建築計画研究所

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