■住まいの話題[186]:エムハウスの出来るまで
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出会い

ある日、「雑誌を見て電話しました。家を建てようと思っているのですが。」という電話で始まった。それではとにかく一度お会いしましょう、と約束をし、メールでいただいた住所へ出かけた。お話をうかがうと、現在お住まいのマンションを売却し、御両親がお住まいの土地に2世帯住宅を建てたいとのこと。家族構成、年齢や新しい家について考えることなど、ざっと伺う。

条件
まずは敷地を見ることだ。できる限り頭を空にして見ることにしている。先入観を持って見ると多方向から情報を得ることや様々な発想を妨げる。そして今回は御両親が住まわれているところも一緒に見せてもらう。次は事務的情報の収集。法規的なことや地盤のデータを調べる。計画地の地質データがあれば良いが、今回のような建て替えの場合はこの段階ではまず望めないので、周辺のものをできるだけ集める。それだけしたら、一度、叩き台をつくる。
叩き台から
叩き台といってもこれが結構重要。あらゆる可能性を探しながら、数時間の打合せの中で伺ったことをもとに最適な住宅を模索する。住宅を設計していて、最初に提案したものがそのまま竣工することはまずない。最初のものをもとに何度も打合せを重ね、お話をきかせてもらう。はじめは打合せが大変だからという理由で、若夫婦が御両親の要望をまとめて伝えてくれた。でもやはり伝言ゲームは難しい。直接話すにこしたことはない。まだ小さい子供は別として、住まう人全員と話して作っていくのが原則と考え、皆に打合せに参加してもらう。そうこうしているとマンションの売却を待っていた期間もあり、最初の電話から10ヶ月ほどが経ってしまった。
外観
テラスからリビングを見る
手続き
大体のプランが固まったら、実施設計と平行して確認申請手続きをすすめる。今回の建物は木造3階建て。構造の決定の仕方はさまざまで、コンクリート打放しでという希望があれば当然コンクリート造になる。でもそのような直接的なことだけでなく、音の問題や地盤の強度、敷地の工事環境、建物の形状、求める雰囲気そして予算など総合的に判断し決定する。

3階建てはこの地域では中高層になる。いわゆるお知らせ看板と近隣説明が義務付けられるのだ。建主にその話をすると「近隣説明?!」と少しおっかなびっくり。でも専用住宅なので、住まわれる方と一緒に個別に訪問してご説明する旨を伝えると快く御了解いただけた。建替えは今までのご近所とのおつき合いがあるので、その点では楽である。でもやはり近隣への配慮は必要。今回も道路を挟んだ北側の家に配慮し、当初の設計より北側の外壁を1m低くした。
引っ越し
近隣説明やお知らせ看板を出すと、周りも「建替えですか」とざわざわしてくる。当事者たちも何となくそわそわしてくるのが人の常。ここからの時間監理が難しい。施工業者はほとんどの場合3社以上の相見積をして決めている。これが結構時間がかかる。1社に絞ってからも金額のつめで時間がかかる。そうこうしていると仮住まいに引っ越し。では、解体工事だけ別契約にして解体だけやってしまいましょう、となる。ただ解体後すぐ工事にかかれないと、これまた大変。「更地になって結構経つわよね」と周りが騒がしい。ここは十分検討して引っ越す時期を決めたい。
変更

工事に入るといろいろある。敷地が測量図と違うこともある。その都度変更を余儀なくさせられる。ただ変更は悪いことでないと思っている。上記のような物理的な理由からだけでなく、より良いものを求める変更はやるべきである。

長く住む住宅だから住み手といろいろ話して最善のものを作っていきたい。それには時間も必要で「実施設計に入っているので変えられません」ということはしたくない。限度はあるが、出来上がるまで最善のものを求めてきた1年半であった。

住まいの話題[186]執筆者
■小西 恵(こにし けい)/ g.i.l. 建築研究所

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