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| この夏、福島県を旅しました。以前から気になっていた二つの建築(町並み)を見学するためです。会津若松市飯盛山の「さざえ堂」と下郷町の「大内宿」です。 |
| 二重螺旋構成の「さざえ堂」 |
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白虎隊で有名な会津若松市飯盛山にさざえ堂はあります。西国三十三観音像を一堂に集めた巡礼観音堂で、世界でも例を見ない独創的な御堂と言われています。それは、その空間構成にあります。言葉ではなかなかうまく説明できないのですが、二重螺旋のスロープで構成され、時計廻りにスロープを上り、壁に埋込まれた観音像を拝みながら頂上に到ります。そして、今度は反時計廻りにスロープを降り、下りと上りは交差せず地上に降り着くのです。
このような二重螺旋の構成はイタリア等に例はありますが、1796年に僧郁堂が考案し建設したと伝えられるさざえ堂がはたして本人のオリジナルのアイデアで二重螺旋の構成に到ったかはわかりません。むしろもっと単純明快で機能的な空間構成の観音堂でも、一堂に巡礼を済ませるという目的はかなうはずです。
こんなに複雑で施工も難しい御堂をただ思いつきで造ったのでしょうか。理由の良くわからない不思議な建築です。しかし、なぜかとても魅力的で、思わずにんまりしてしまう建物なのです。つまり、建築には機能や使い勝手だけでは理解できない、単なる思いつきとも言える建築もあるのです。そして、そんな建築はきまって魅力的なのです。
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| さざえ堂 |
大内宿 |
| 美しい町並みの「大内宿」 |
もうひとつの気になっていた建築(町並み)、大内宿は会津と日光を結ぶ会津西街道の宿場町です。昭和56年に「重要伝統的建造物群保存地区」に指定され、美しい茅葺きの民家が軒を並べます。昭和40年代の町並み保存運動をきっかけにさまざまな人々の努力が国や県や町を動かし、大内宿の人々がその美しい町並みの保存に努めています。保存運動の詳細については別の機会で触れたいと思いますが、ここには軒を同じにそろえ、同じ材料で同じように仕上げた美しさがあります。
ここには卓越したデザイナーは存在しません。デザインコードを設け各戸を造っていったわけではありません。この地の気候風土と生活が材料と構法を選択し、この茅葺きの民家を造り、大内宿の人々の毎日の生活が美しい町並みを残したのです。茅葺きは大勢の人の力を借りてはじめてでき上がります。茅の葺き替え作業が村びとの共同作業なのです。
つまり、デザインなどしなくとも毎日の生活の中で普通に造り、生き残ってきた建築は美しく機能的であり、これもまたすばらしく魅力的な建築であります。
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| 魅力的な「住まい」 |
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二つの魅力的な建築(町並み)を対比的に取り上げました。不思議な建築の魅力と生き残った建築の魅力ですが、ここで魅力的な「住まい」について考えましょう。
予算と法規が許せば建て主は丸い家でも三角の家でも造ることは可能ですが、それは魅力的な住まいを造ることではありません。住まい手の生活や人生観が正直にそのまま反映されるのが「住まい」です。そうしてできた「住まい」が集まって町並みが構成されます。
住まい手のあなたはいったいどんな「住まい」を思い描くのでしょうか。不思議な建築でしょうか。生き残った建築でしょうか。一般解はありません。ただ決まって言えることは住まい手にとっての魅力と建築家にとっての魅力はいつも多少の「ずれ」があるようです。そして、その「ずれ」がまた新たな魅力を生むのです。
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住まいの話題[189]執筆者
■岸 成行(きし まさゆき)/ 岸総合計画研究所 |